「回らない」 訴訟や撤去茨城県つくば市内の19の小中学校に昨年夏、円筒とリング型の羽根を組み合わせた、風変わりな風車が計23基建設された。高さ10メートル、出力10キロ・ワットの風力発電機が、校庭の一角で、子どもたちを見下ろしている。つくば市では、発電した電力を電力会社へ売った収益で地域通貨を発行、環境イベントなどに参加した市民にこれを配布し、買い物してもらう――という仕組みを描き、このプロジェクトは環境省の循環型社会モデル事業にも選ばれた。 ところが、この風車があまり回らない。 元市議の亀山大二郎さん(65)らが、昨年11月から月1回、19校を回って風車のそばに掲示された発電量を記録した。その結果、4月までの発電状況は、最も多い風車で計197キロ・ワット時、少ないところは18キロ・ワット時。計画では年間発電量は18万キロ・ワット時だったが、4月までの総発電量は1587キロ・ワット時で、1%にも達していなかった。 つくば市は年間平均風速が毎秒2メートルと、風車にはあまり適していない。そんな条件でも回る風車を探し、早稲田大などが開発した縦型風車を契約した。それがさっぱり働かない。 市では「わずかな風でも回る筒型風車と、発電効率が高いリング型風車を組み合わせた新機種、という早大の説明を信用した」と釈明する一方、「早大にだまされた」として4月、早大と風車メーカーを相手に約3億円の損害賠償訴訟を東京地裁に起こした。 これに対し早大側は「市の要請通りに設置しただけ。風況の良くない場所で大きな発電量を得ようとするなど、市の計画自体にずさんさがあった」と反論する。 一方、亀山さんらの調査では、発電量を予測する「風況調査」を風車設置場所で行わなかった、機種を選ぶ委員会も委員長を決めないまま結論を出すなど、市の不手際も明らかになったという。このため、「市の計画はずさん。公費を無駄遣いした」として、亀山さんらが市長を相手に損害賠償訴訟を起こすなど、つくば市の風車は思わぬ騒動に発展した。 ◎ 伊豆半島南部の静岡県東伊豆町では、2003年、天城山ろくの高台にある町有地(標高430メートル)に、出力600キロ・ワットの風車3基を設置した。 同町では建設予定地にポールを立て、10メートルと20メートルの高さに風力風向計を設置。1年間観測を続け、季節に応じて海側と山側の両方から、平均秒速6・6メートルの風が吹くことを確認して、建設を決断した。 風車は順調に稼働。同町の森田七徳(かずのり)主査によると「発電収入は年間約5000万円。修理費などを引いても年1500〜2000万円の利益が確保できます」という。 成り行き任せの行動を「風任せ」と例えるように、風力発電には不安定な要素が多い。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、設置条件が悪いなどで撤去・休止された風車は1985年以降、全国で37基。総出力7700キロ・ワットが失われた。 北海道経済産業局が04年、道内の風力発電稼働状況を調査したところ、発電計画の95%以下だった発電所が、全体の38%に達することが明らかになった。調査を担当した北海道産業保安監督部の仲条覚・課長補佐は「事前に綿密な風況調査を行った発電所の多くは発電実績も安定している。風車成功のカギは適切な風況調査、気象観測にあるといっても過言ではありません」と説明している。 ◎ 事前検討に課題を残したつくば市。早大を相手取った訴訟は、19日に第1回口頭弁論が行われる。 (2006年6月15日 読売新聞)
|
今週のPICK UPPR
|
| ▲この画面の上へ |
|
会社案内|
サイトポリシー|
個人情報|
著作権|
リンクポリシー|
お問い合わせ| YOMIURI ONLINE広告ガイド| 新聞広告ガイド| 気流・時事川柳(東京本社版)への投稿| 見出し、記事、写真の無断転載を禁じます Copyright © The Yomiuri Shimbun. |