(1)「雑品」エアコン、中国へ転がっている数台の家庭用エアコンを、パワーショベルの太いツメがつまみ上げた。エアコンはへこんで形を変え、鉄板で囲まれた敷地の隅に積み上げられていく。 「持ち上げる時、プシューッという音とともに真っ白な気体が噴き出すことがある。エアコンを持ち込む前に、フロンを抜くようお願いしているのだが……」 神奈川県内の鉄くずスクラップ会社の社長(37)が、声をひそめて話す。オゾン層を破壊するフロンを、大気中に放出してはいけないことは、もちろん知っている。 父は30年来、地元の町工場を回り、鉄くずを回収してきた。後を継いだ社長は、今年はじめ、「買い取り強化キャンペーン実施中」と題したチラシを作った。住宅地を軽トラックで回って中古家電を集めている「買い子さん」と呼ばれる業者などに配り、持ち込みを呼びかけるためだ。 チラシの花形はエアコンで、1キロ75円。それが今は90円になった。同県内の商社に1キロ120円で売る。 ◇
このスクラップ会社に出入りする「買い子さん」歴2か月という男性(41)は、軽トラックで神奈川県東部の住宅街を回る。家庭用エアコンは室外機・室内機セットで3500円になる。家庭から引き取る時には、室外機・室内機あわせて7000円をもらう。取り外しが必要な場合は別に5000円。エアコンは、二重の収入を得られるという、ありがたい商品なのだ。 古物商や廃棄物の収集運搬業の許可は持っていない。9月は、軽トラの所有会社への上納金、ガソリン代、アパートの家賃を引いて、30万円が残った。九州に残した妻と4人の子供に送った。 ◇
神奈川県の商社に買い取られたエアコンは「雑品(ざっぴん)」として中国に輸出される。 雑品とは、鉄と銅、アルミなどの非鉄、プラスチックなどがごっちゃになったスクラップのこと。廃電線や基板なども入っている。 日本鉄リサイクル工業会によると、昨年輸出された雑品は200万トン以上で、輸出は急増中。専門商社は「日本国内では、銅、アルミ、ステンレスと手を加えて種別に解体・仕分けしないと売れない。10年前から、人件費の安い中国への輸出が商売になってきた」という。 経済成長めざましく、金属資源をどんどん消化する中国。10年前はトン当たり20万だったのが今は90万という銅の国際価格急騰が、雑品需要に拍車をかける。 しかし、エアコンが雑品として輸出されるには、わけがあった。 中国は2002年、コンピューターやエアコンなど21品目の廃電気製品の輸入を禁止した。その輸入禁止貨物リストには「部品、ばらばらになった部品、かけらになった部品、砕いた部品を含む」とある。 臨海地区のブローカー(46)は、「様々な金属くずや銅線に混ぜ込んで『雑品』にしてしまえば、規制逃れと、重量があって採算の取れる荷になるという一石二鳥の効果がある」と明かした。 ◇
家庭用エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機、テレビの家電4品目を対象にした家電リサイクル法が施行されて5年。小売店―指定引き取り場所―家電メーカーのリサイクル工場という法定ルートに乗るのは、5割に過ぎない。後の半数はどこへ行き、どう処理されているのか。実態を追った。 (2006年10月17日 読売新聞)
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