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    安保法制・アーカイブ

    日米同盟の基本戦略必要…岡崎研究所理事(元海将) 金田秀昭氏

     政府が14日に閣議決定した新たな安全保障関連法案により、日本の防衛政策は大きな転機を迎えた。その意義について、日米の専門家に聞いた。

    • 岡崎研究所理事(元海将) 金田秀昭氏
      岡崎研究所理事(元海将) 金田秀昭氏

     集団的自衛権の限定行使などを盛り込んだ新たな安全保障関連の2法案は、現行憲法下での自衛権を巡る国内論議に一つの決着をつけるもので高く評価できる。国会での審議はこれからだが、日本の安保政策は大幅な改善が期待される。

     武力攻撃と即断できない「グレーゾーン事態」への対応、国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の活動に関する制約など、法整備が不十分と指摘されてきた部分が見直されたのは大きな進展だ。

     1991年の湾岸戦争当時、日本政府は巨額の資金協力を行ったが、自衛隊の活動は、停戦後のペルシャ湾への掃海艇派遣のみだった。初の自衛隊の海外派遣だったが、日本の貢献は国際的には評価されず、政府関係者にはいわば「トラウマ」のようになっていた。その意味で、閣議決定まで来たことは感慨無量だ。

     一方で、課題も残されている。自衛権の保有を明記するなどの憲法改正が必要だと考えるが、実際には難しいかもしれない。憲法改正の機運が高まるまでは、安全保障政策の基本法の策定が必要ではないか。

     日米同盟については、先に合意された新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)がある。ガイドラインは、いわば日米防衛協力の具体策で、基本戦略に欠けており、「日米同盟戦略」の策定が急務だ。これは、2013年12月に日本政府が策定した国家安全保障戦略と対になるものだ。

     なぜ米海軍と一体になって行動する必要があるのか、その目的は何か、そういう疑問に答えるものでなくてはならない。日米同盟の強化に懸念を示している中国への答えとなるだろう。

     国内法の整備は、日米同盟が片務的なものから双務的なものに進化する一歩となる。南シナ海を含む周辺海域では、米豪韓などの海軍との共同訓練が恒常的に行われるようになるだろう。

     日本を取り巻く安全保障環境は現在、事実上旧ソ連のみが脅威だった冷戦時代とは異なり、軍拡を続ける中国や北朝鮮の出現で複雑化している。防衛力は、安保法制を整えてこそ抑止力を発揮する。米国の相対的な影響力が低下する中、地域や世界の平和と安定のため、米国だけでなく国際社会でも、日本に対する期待が高まっている。

     今回の安保法制の実効性を確保するため、防衛力の整備や運用体制の強化など足腰を強くすべきだ。国民の理解を得ながら今回の一連の関連法案の審議を進めることも大切だ。本質的な部分で妥協してはいけない。(政治部 寺口亮一)

     かねだ・ひであき 日本国際問題研究所客員研究員。海自第4護衛隊群司令、護衛艦隊司令官などを歴任。69歳。

    2015年05月15日 07時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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