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教育のため 別居選ぶ韓国人

 米国で印象に残ったのは、韓国人のパワフルさだ。北バージニアに住む韓国人は、人口の3%近くを占める。日本人の多くが駐在員家族で、数年で帰国するのに対し、韓国人には永住を決意し、一族で渡ってきた人も少なくない。

 韓国系スーパーは地元米国人にも大人気。飲食店などにも大勢の韓国人が働く。米国社会に根を下ろし、たくましく生きるエネルギーには驚くと同時に、感心した。

 私が通った英語学校にも、韓国人は多かった。彼らも英語には苦労し、ヘタ同士で「ヨン様知ってる?」などと交流を深めた。日韓で問題が起きると、熱い議論を挑まれたのも懐かしい思い出だ。

 そんなころ、「キロギ」という言葉を新聞で知った。雁(がん)を意味する韓国語だが、実はもう一つ、妻子は英語圏の国に、父は韓国にと、離れて暮らす家族のことも指す。渡り鳥のように家族と韓国の間を往復する父親は、「キロギ・アッパ(雁の父)」と呼ばれる。

 今年1月9日のワシントン・ポスト紙に、キロギに関する大きな記事が載った。「つらい選択。教育のため別居する韓国人一家」の見出しで、バージニアのお隣、メリーランド州に住む家族を描いた、丹念なルポだった。

 子供に英語教育を受けさせるため、1年前から母と子供3人が米国に住み、会社員の父は韓国から仕送りを続ける。子供の未来に夢を託し、別居を続けるキロギ一家の、苦悩と現実を紹介していた。

 韓国の受験競争は日本以上に猛烈で、教育熱は高い。早期英語教育のための母親同伴留学が、10年以上前からあると知って驚いた。同時に、家族と離れて一人寂しく暮らす「父キロギ」の問題も指摘され、韓国では最近、その孤独死が報道されている。

 韓国人にキロギについて聞くと、「家族が離れて暮らすのは反対」と、韓国の教育状況を批判する女性がいる一方で、家族で留学中の男性は「帰国時には、自分も妻子を残したいと思うかも知れない」とポツリ。

 実は正直に言うと、私も考えなくはなかった。長男には自分のように英語に苦労せず、自由に話せるようにしてやりたいと。結局は非現実的であきらめたが、こんな気持ちに自分がなったこと自体、驚きだった。

 ポスト紙の記事は、久しぶりの家族再会も追っていたが、ギクシャクした空気が最後まで残り、父は今後9年も続く別居に、早くも不安を感じた様子だった。多大な犠牲を払っても、子供の将来にかけるキロギ。韓国人パワーの別の一面を見た気がした。(メディア戦略局 松井正)

2005年12月6日  読売新聞)
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