皇太子さま、スペイン訪問前の会見詳報(1)
皇太子さまは11日、スペイン公式訪問を前に東宮御所で記者会見された。会見のやりとりは以下の通り。 ――今回のスペイン訪問にあたっての抱負をお聞かせください。皇太子さまは昨年、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任されるなど、熱心に水問題に取り組まれています。今回は「水と持続可能な開発」をテーマに開かれているサラゴサ国際博覧会に出席して特別講演もされるそうですが、博覧会では何を視察して、どのようなメッセージを伝えたいとお考えですか。水問題への今後の取り組みについても合わせてお聞かせください。また、5回目の訪問となるスペインという国に対する印象やスペイン王室との交流についてもお聞かせください。 ご回答ご質問にお答えする前に、先だての岩手・宮城内陸地震により、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますと共に、ご遺族と被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ、災害からの復旧や復興が一日も早く進むことを願っております。 2008年サラゴサ国際博覧会の開催に当たってフアン・カルロス国王陛下、およびスペイン国政府からのご招待を頂き、スペイン国を訪問できることを、大変うれしく思います。ご招待頂いたカルロス国王陛下、およびスペイン国政府に対して、心から感謝の意を表したいと思います。今回の訪問においても国王同妃両陛下、フェリペ皇太子同妃両殿下に、お会いできることを楽しみにしております。両陛下にお会いするのは前回2004年のフェリペ皇太子殿下の結婚式に出席のため、スペインを訪れて以来のこととなります。また、フェリペ皇太子殿下ご夫妻とは、両殿下が2005年6月に我が国で開催された愛・地球博をご視察になった際、東宮御所で夕食をご一緒して以来のこととなります。 今回の訪問では両陛下、両殿下から、それぞれ夕食へお招きをいただいており、こうした温かいお心遣いに心から感謝いたします。天皇、皇后両陛下には、長年にわたりスペイン王室との交流を深めてこられました。私もその恩恵にあずかっていることに、感謝をしつつ、スペイン王室との友情を深めていかれればと考えております。 私のスペイン国への訪問は今回が5度目になります。初めての訪問は私が高校2年生の時でしたので、もう30年以上前になります。最初の訪問の時にはスペイン南部のグラナダに近い当時のベルギー国のボードワン国王陛下のご別荘にお招きを頂き、ボードワン国王陛下やスペインのご出身でいらっしゃるファビオラ王妃陛下、そしてそのご親族方などとご一緒に、大変楽しい数日間を過ごさせていただきました。その際、ファビオラ王妃様のご案内で、アルハンブラ宮殿を訪れたのですが、今回の訪問に当たって、当時写した写真を見返していると、その時の思い出が大変懐かしくよみがえって参りました。天国を想定した水の庭園の光景やライオンの中庭に響く噴水の音は、今でも鮮明に覚えています。厳しい乾燥地域で生み出されたイスラム文化の水に対する強い思いをこの時、初めて知ったように思います。その後、イギリス留学中の1985年、1992年のセビリア万国博覧会、バルセロナオリンピック大会や2004年のフェリペ皇太子殿下のご結婚の際にスペインを訪問しましたが、そのたびに感じるのは豊かな歴史と文化の多様性や人々の温かさや明るさ、そしてそうした人々が支える経済社会の目覚ましい発展ぶりでした。 スペインの歴史をひもとけば、そこにはケルトの文化もあれば、セゴビアの水道橋に代表されるローマの文化、そしてアルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータなどに象徴されるキリスト教とイスラム教の融合された見事な建築文化などがあります。ちなみにスペインを代表する料理の一つであるパエージャも、イスラム教徒によってもたらされた料理を起源とすると、ある時教えられました。 経済・社会の面では、スペインの国内総生産は現在世界第8位と、世界経済の中でも重要な位置を占め、主要産業も食品加工、化学、自動車、観光など幅広い分野にわたっています。また、環境問題への取り組みへも力を入れており、再生可能なエネルギーとして注目されている風力発電については、スペインは、ドイツ、アメリカに次いで発電の規模が世界第3位で、スペインの持つ高い技術が世界各国に供給されていると聞いております。 今回も様々な場所を訪れる予定ですが、そこで多くの人々と出会い、その土地の歴史や文化に触れると共に、発展する新しいスペインの姿を実際に見ることを楽しみにしています。 今回のサラゴサ博覧会は3年前に「自然の英知」をテーマとして我が国で開催された愛・地球博によって示された新しい国際博覧会の理念を継承して、「水と持続可能な開発」をテーマに開催されます。日本も、水と共生する日本人、知恵と技をテーマに、古くから水を大事にしてきた日本人の生活と文化を紹介する日本館を設けて参加しています。私も日本館やスペイン館など、いくつかのパビリオンを訪れる予定ですが、人類や地球の未来にかかわる、あらゆる課題の根底に横たわる水問題について、各館がどのような工夫をしながら、メッセージを発しようとしているのか見ることを楽しみにしています。 また今回の万博では、各参加国による展示、行事等とは別に、水についてシンポジウム形式で議論を行う「水の論壇」が開催されます。私も7月21日のジャパン・デーに開催されるシンポジウムで講演を行う機会を与えていただき、ありがたく思っております。今回の講演では、昨年の12月の第1回アジア太平洋・水サミットでの講演に引き続き、「人と水」を基本テーマに、特に日本において人々が水の驚異から自分たちの暮らしを守る一方で、水を利用するために努力や工夫を続けてきた歴史について、お話したいと考えています。 先人の知恵や工夫には、今なお私たちが学ぶべき点が多くあると思いますし、地域地域で先人たちが培ってきた経験は、今後、人類が国境を越えて持続可能な発展を遂げていく上でも役に立ち、大切なものであると考えます。そうした思いを少しでもお伝えすることができればと思っております。私も国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として、今回のスペイン訪問の経験を踏まえて、世界の水と衛生の問題についてさらに理解を深める努力を続けていきたいと思います。これまで水や水管理に関係のあるいくつかの施設や場所の視察を行いましたが、日本の知恵や技術が世界の人々の役に立つことを願っています。そして私自身、世界の水と衛生の問題の解決に向けて、少しでもお役に立てるよう、名誉総裁の立場で考えていきたいと思います。 最後になりますが、今回の私のスペインへの訪問が、スペインと日本の相互理解と友好関係の増進に少しでもお役に立てればと思っております。 (2008年7月11日  読売新聞)
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