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    働く

    過酷な「ブラックバイト」…学生を「洗脳」する構図

    NPO法人POSSE代表 今野晴貴
     学生が低賃金で過酷な労働を強いられる「ブラックバイト」が問題になっている。アルバイトに時間と体力を奪われ、学校の講義を欠席したり、単位を落としたりと学業に影響が出ることもあるという。厚生労働省が11月に行った初の実態調査でも、半数近くが何らかのトラブルを経験したことがあるという結果が出た。自分が、わが子がブラックバイトに遭遇してしまったらどうすればいいのか。『ブラックバイト』(大内裕和氏との共著、堀之内出版)の著書もある今野晴貴氏に解説してもらった。

    毎日12~13時間、休日なし…勉学にも影響

    • 辞めたいと訴えても、脅されて辞められないことも(写真はイメージ)
      辞めたいと訴えても、脅されて辞められないことも(写真はイメージ)

     今回の厚生労働省の調査からは、「ブラックバイト」と呼ばれる過酷な労働環境で働く学生の実態が明らかになった。アルバイトの実態解明に国が乗り出したことは高く評価できる。だが、そもそも「ブラックバイト」とはどのようなものだろうか。

     大学1年生が被害に遭った、ある大手飲食店チェーンの事例を挙げよう。当初は週4日、1日5時間程度の勤務だったが、今年の1月にバイトが5人ほど辞めて人手不足になり、毎日のように出勤させられるようになった。大学のテストがあったのに、テスト前日も当日もバイトが入っていたため、いくつか単位を落としてしまったという。

     何度も店長に辞めたいと訴えた。その度に店長から胸倉をつかまれたり、「辞めると懲戒解雇扱いになる。そうすると就職に響くよ」といった脅しを受けたりしていた。その後、開店前の「仕込み」作業や、閉店後の締め作業も強いられるようになり、ほぼ毎日、午後1~2時から深夜2時頃まで働いていた。休日もなかった。

     彼はその後「ブラックバイトユニオン」に加入して辞めることができたのだが、「親に心配をかけたくない」とずっと我慢していたのだ。

    鍵や金銭の管理まで…学生に過度に依存する職場

    • ブラックバイトのパターン
      ブラックバイトのパターン

     外食業や小売業などの接客業務は、比較的単純でマニュアル化された業務が大半を占めている。店舗を運営するコストは、こうしたマニュアル労働を賃金の安い非正規雇用を活用することで限界まで引き下げることができる。

     だから今日、飲食店や小売店舗などでは、学生アルバイトが「戦力」として職場組織で高度に期待される存在となっている。それらの店舗では、些末(さまつ)な仕事を学生に任せるのではなく、商品の陳列や注文など、直接売り上げに関わる業務に責任を負わせたり、金銭の管理を任せたりしていることも少なくない。要求するシフトに学生が入らなければそもそも営業ができない職場も存在する。

     そのような過度に学生に依存した職場は、「学業を無視したシフトや残業命令」につながりやすい危険をはらんでいるのだ。先ほど紹介した事例でも、学生は店長から鍵を渡されて仕込みを担当させられており、自分が職場に行かなければ店が営業できない状況だった。

     もちろん、学生を使う側の企業にも言い分はあるだろう。アルバイトといえども「仕事」なのだからしっかりと働いてほしいという経営者の立場も理解できる。

    2015年11月20日 09時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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