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    生活

    老人ホーム選びの落とし穴…こんな施設はやめておけ!

    介護・医療ジャーナリスト 長岡 美代
     費用が安いとして人気の特別養護老人ホームや、介護付き有料老人ホームなど、様々なタイプの老人ホームがあるなかで、介護の受け皿として脚光を浴びているのがサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。民間事業者が運営するバリアフリー住宅で、ここへ来て急増しているが、補助金目当てで安易に開設したり、突然廃業したりする施設もあり、入居者が途方に暮れるケースが出ている。 ( つい ) の住み家を選ぶ上で、注意すべきポイントは何か。介護・医療ジャーナリストの長岡美代氏に寄稿してもらった。

     

    突然の廃業…「何の説明もなく」

    • 介護ベッドで眠るお年寄りの手。老後をどう過ごすかは多くの人の関心事
      介護ベッドで眠るお年寄りの手。老後をどう過ごすかは多くの人の関心事

     「諸般の事情により業務を終了する運びとなりました。11月以降は介護サービスなどをご利用いただけない状態となりますので、(あらかじ)めご承知ください」

     三重県四日市市にあるサ高住の運営者から、入居者や家族にこんな知らせが届いたのは、廃業のわずか1か月前だった。

     元入居者の加藤陽子さん(仮名、60歳代)は、「最後まで会社の幹部は現れず、何の説明もありませんでした。せっかく仲良くなれた入居者もいたのに、まさかこんなことになるとは思わなかった」と戸惑いを隠せない。現在は別の老人ホームで暮らすが、いまでも当時のことを思い出すと不安になるという。

     サ高住とは、安否確認と生活相談が付いたバリアフリー住宅で、高齢者住まい法により2011年10月に制度化された。国が一戸あたり最大100万円の建設費を民間事業者などに補助しているため数が急増し、全国には約19万戸が整備された(15年11月現在)。

    「特養=安い」とはかぎらない

     自宅で介護できなくなったときに頼りになる老人ホームにはいくつか種類があるが、なかでも人気が高いのは公的な特別養護老人ホーム(特養)だ。多額の公費が投入され、4人部屋ならば月8万~9万円程度(一般所得者)の低料金で利用できるため、全国には約52万人の待機者がいる。今年4月からは「要介護3」以上の中重度者に入居が限定されたため、さらに狭き門となった。

     ただ、昨今は「特養=安い」とは必ずしもいえなくなっている。新設の施設は入居者を10人程度の少人数にグループ分けした「ユニット型個室」が中心で、一般所得者であれば月13万~15万円程度はかかるからだ。個室を希望するのであれば、民間の老人ホームと料金面で大差はない。

    サ高住2万人分を積み増し…地域によってダブツキも

     すぐに入居できる点では民間の方が使い勝手がよく、なかでもサ高住を選択する家庭は増えている。敷金程度で入居でき、月額料金は食費込みで14万円が平均。なかには10万円前後で利用できるところもある。サ高住の約8割は訪問介護やデイサービスなどの介護事業所を併設し、要介護者向けが中心だ。

     安倍政権はこのほど、一億総活躍社会を実現するために「介護離職ゼロ」を掲げ、20年代初頭までに従来の計画よりも施設などの整備を加速し、サ高住については新たに約2万人分を積み増すことを決めたばかりである。

     だが、補助金狙いの安易な参入が相次いだため、地域によってはダブツキが生じており、入居者が集まらずに苦戦する例も見受けられる。国土交通省の調査によると、サ高住の平均入居率は約7割(15年8月現在)。単純計算でも、約5万戸以上が空室になっている状況だ。

     関西にあるサ高住の事業者は、「開設から1年たっても5割も埋まっていない例は珍しくない」と語る。冒頭に紹介した四日市市のサ高住のように経営が立ちゆかなくなって、建物の買い手を求める情報が業界内で飛び交っているという。

     

     

    2015年12月03日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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