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    生活

    「親の葬儀」で慌てないよう…準備したい3つのこと

    第一生命経済研究所 主席研究員 小谷みどり

    準備したい(3)…親の墓、どこに建てる?

    • 若い世代でも、6割以上が年に数回墓参りに(写真はイメージ)
      若い世代でも、6割以上が年に数回墓参りに(写真はイメージ)

     お墓もお葬式と同じで、故人の遺骨を納める場所ではあるものの、遺された人が故人に手を合わせる場所という意味では、遺された人のためにあるともいえる。第一生命経済研究所の2009年調査では、年に数回以上墓参りする人は7割を超えており、35歳から49歳までの若い世代でも、66.0%が年に数回以上墓参していた。信仰する宗教がないと言う反面、多くの人は「お墓に行くと、亡くなった人に会える気がする」と感じていることも明らかになっている。

     「子どもに迷惑をかけたくない」と、生前にお墓を建てる高齢夫婦はとても多い。しかし実家の近所の霊園に建てたはいいが、実際に両親が亡くなってみると、実家から離れた場所に住んでいる子どもにとっては、墓参りは金銭的にも時間的にも大きな負担となる。

     昨今、お参りの形跡がなく荒れた無縁墓が増えていることが社会問題となっている。高松市が1990年度に11か所の市営墓地で無縁墓の実地調査をしたところ、約2万4500基のうち約7500基の使用者が分からず、3基に1基が無縁墓という実態が明らかになった。熊本県人吉市の場合は、2013年に市内の全霊園を調査したところ、4割以上が無縁墓で、なかには8割が無縁墓となっている霊園もあったという。

    第一生命経済研究所が2009年に実施した調査によれば、自分のお墓が「無縁墓にはならない」と回答した人は13.9%にとどまり、「いつかは無縁墓になる」と回答した人は50.3%と半数を超えた。しかも子どもがいる人でも、過半数の52.7%が無縁化する可能性があると考えていた。無縁墓の多くは子孫が絶えてしまったというよりも、子孫が遠く離れたところへ行ってしまった結果、増加しているのだ。

    生前に建てたお墓に入れないことも

    • 墓参りがしやすい場所への「改葬」も増えている(写真はイメージ)
      墓参りがしやすい場所への「改葬」も増えている(写真はイメージ)

     一方、遠く離れたお墓を自宅近くに移す人が2000年以降、緩やかに増加している。お墓を引っ越すことを「改葬」というが、厚生労働省の統計によれば、2013年だけでも改葬は8万8397件もあった。せっかく親が生前にお墓を建てていても、一度もそこへ納骨されることなく、子どもがお墓参りのしやすさを考慮して、自宅の近所にお墓を移す事例もある。

     「お墓参りで家族に迷惑をかけたくない」と、散骨してほしいと言い残す高齢者もいるが、本人の意思を尊重して遺骨を全部海にまいた遺族が、「どこに向かって手を合わせればいいのか」と悩むケースもある。故人の命日に船をチャーターして散骨した場所に手を合わせに行く遺族もいるが、費用がかさむうえ、思い立ってすぐにお参りすることはできない。親側が子どもに迷惑をかけずにすむと考えたことが、かえって子どもにとって負担となるケースは少なくない。

     親のお葬式やお墓をどうするかは、本人と遺される子どもの双方で考える必要がある。しかも、話し合えるのは親が元気なうちに限られる。これからちょうど年末年始。帰省したときにでも、親とぜひ話し合ってみてはいかがだろうか。

    プロフィル
    小谷みどり( こたに・みどり
     第一生命経済研究所主席研究員。博士(人間科学)。大阪府出身。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。最新著は、『だれが墓を守るのか 多死・人口減少社会のなかで』(岩波書店)。他に、『今から知っておきたいお葬式とお墓45のこと』(家の光協会)、『変わるお葬式、消えるお墓<新版>』(岩波書店)、『こんな風に逝きたい ホスピスからお墓まで』(講談社)など。共著多数。

    関連書籍

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    2015年12月24日 09時31分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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