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    経済

    「夢の国」東京ディズニーリゾートに異変の兆し

    法政大学経営大学院教授 小川孔輔
     作りこまれたアトラクション、おもてなしの心にあふれたキャスト、ディズニーグッズを身にまとった来園者――。東京ディズニーリゾート(TDR)といえば、テーマパーク業界のトップをひた走る「夢の国」というイメージが強い。しかし、そんなTDRに異変の兆しがあるという。法政大学経営大学院の小川孔輔教授は、この傾向が続いた場合、TDRが苦戦の続くファストフード大手「マクドナルド」と同じ道をたどりかねないと警鐘を鳴らす。

    暫定順位でトップ10落ち…顧客満足度

     サービス産業生産性協議会が実施している「日本版顧客満足度指数(JCSI)」という日本の小売サービス業32業種・上位企業約400社を対象にした日本最大規模の消費者調査がある。筆者も改善・運営委員会の座長として関わるこの調査で、顧客満足度(CS)上位企業のランキングに変化が起こった。2009年以来、劇団四季とトップを争ってきたTDRが、あくまで暫定値ではあるが、トップ10位のリストから外れてしまったのである(図表1)。

     2015年7~8月の調査で、TDRの顧客満足度指数(CSI)は77.9点。前年度(82.7点)との比較では、4.8点ダウンした。全サービス業でトップだった2013年度(86.8点)に比べ8.9点の下落である。エンタテインメント部門での順位も、宝塚歌劇団に抜かれて、はじめて第3位になった。また、テーマパーク業界の競合2社(USJとハウステンボス)との満足度の差も縮まっている(図表2)。

     「夢の国」で何が起こっているのか。満足度が低下した原因について考えてみたい。

    • 図表1 顧客満足の上位企業・ブランド【出所】「2015年度JCSI第3回調査」(サービス産業生産性協議会) *以下同様
      図表1 顧客満足の上位企業・ブランド【出所】「2015年度JCSI第3回調査」(サービス産業生産性協議会) *以下同様

    • 図表2 5社の顧客満足度の推移(エンタテインメント部門)
      図表2 5社の顧客満足度の推移(エンタテインメント部門)

    値上げが影響?

     TDRの顧客満足度に異変が起こったのは、2014年度からだ。原因のひとつは、入園料の値上げではないかと言われている。

     TDRを運営しているオリエンタルランドは、2014年4月に東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの入園料を大人6200円から6400円に200円値上げした。そして、2015年に入って2度目の値上げを実施した。現在、大人の入園料は6900円になっている。なお、値上げと同時に、2014年には改装やメンテナンスのため、一部のアトラクションを期間限定だが休止している。

     2013年に、TDRは開園30年記念行事と新アトラクションの導入で、開園以来最大の入場者数(3130万人)を記録した。ところが、2014年の入場者数は3138万人で、対前年比では微増に終わっている。一方、競合のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は、入場者を伸ばしている(2013年:1050万人→2014年:1270万人)。USJは2014年4月にTDRに先行して、入園料を6980円に値上げしたにもかかわらずだ(図表3、図表4)。

     また、HIS傘下に入ったハウステンボスも、2009年に141万人まで落ちていた入園者数が、2015年は300万人を突破しそうな勢いである。ハウステンボスも5年間で7度の値上げを実施しているが、入場者は増加の一途をたどっている。

    • 図表3 TDRとUSJの入園料の推移(2000年~2015年)
      図表3 TDRとUSJの入園料の推移(2000年~2015年)

    • 図表4 TDRとUSJの入場者数推移(2001年~2015年)
      図表4 TDRとUSJの入場者数推移(2001年~2015年)

    低下する「お値頃感」と「また行きたい」

     来園者数が微増にとどまっているのは、パークの入場者数が大きくなりすぎ、飽和状態に近づいているという可能性もあるが、問題はそれだけではない。TDRの来園者が値上げをどのように感じているのかを、知覚価値(お値頃感)とロイヤルティー(継続利用意向)の変化で見てみることにする。

     2013年までCSトップのTDRは、知覚価値とロイヤルティーでも上位に位置していた(図表5、図表6)。ところが、2014年からは、顧客満足と同様に、両方の指標とも低下している。2014年の入園料値上げにより、TDRのお値頃感が低下してCSが下がったことを推測させる。なお、同じく値上げを実施したUSJやハウステンボスも知覚価値が低下している。

     興味深いのは、劇団四季と宝塚歌劇団の知覚価値が、長期的には高まっていることである。両社の料金体系を調べてみると、劇団四季は、リーマン・ショックが起こる直前(2008年)に、当時1万2550円だったS席の料金を9800円に値下げしている。その後も座席料金を据え置いた結果、劇団四季の知覚価値は、調査期間中で上昇トレンドにある。阪急電鉄(宝塚歌劇団の運営母体)は、同じ年に宝塚大劇場と東京宝塚劇場の料金を値上げしている。S席が7500円(兵庫)と8000円(東京)にアップして、現在ではさらに8300円(兵庫)と8800円(東京)に値上げされている。しかし、消費者が感じるお値頃感にはほとんど変化が見られない(図表5、図表6)。

    • 図表5 知覚価値の推移(5社のスコア)
      図表5 知覚価値の推移(5社のスコア)

    • 図表6 ロイヤルティーの推移(5社のスコア)
      図表6 ロイヤルティーの推移(5社のスコア)

    2016年01月06日 09時26分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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