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    歴史

    大河ドラマ「真田丸」の舞台(2)…武田氏を翻弄した3つの城

    城郭ライター 萩原さちこ
     NHK大河ドラマ「真田丸」の放映がいよいよ始まった。序盤で注目を集めたのは、甲斐の武田氏が信玄公を継いだ勝頼の時代で滅亡していく様、特に勝頼の哀愁漂う姿だった。武田氏は真田氏の元主君。今回は 「2016年大河ドラマの舞台はここ! 真田の城(上)『上田城』」 「同(下)『真田丸』」 に続き、滅亡目前の勝頼を翻弄した三つの城(新府城、岩櫃城、岩殿城)について、城郭ライターの萩原さちこさんに説明してもらおう。

    武田氏滅亡へ、運命の分かれ道

    • 武田勝頼と家臣らの菩提(ぼだい)を弔う景徳院(山梨県甲州市)にある勝頼の生涯石。勝頼はこの石の上で自害したという。嫡男・信勝と正室・北条夫人の生涯石もある(写真はいずれも萩原さちこ撮影)
      武田勝頼と家臣らの菩提(ぼだい)を弔う景徳院(山梨県甲州市)にある勝頼の生涯石。勝頼はこの石の上で自害したという。嫡男・信勝と正室・北条夫人の生涯石もある(写真はいずれも萩原さちこ撮影)
    • 景徳院にある武田勝頼の墓。辞世の句は「おぼろなる 月もほのかに 雲かすみ はれてゆくえの 西の山の端」
      景徳院にある武田勝頼の墓。辞世の句は「おぼろなる 月もほのかに 雲かすみ はれてゆくえの 西の山の端」
    • 景徳院近くにある四郎作古戦場碑。蟄居(ちっきょ)の身から勝頼のもとに駆けつけた内膳友晴が壮絶な戦いの末に討ち死にした
      景徳院近くにある四郎作古戦場碑。蟄居(ちっきょ)の身から勝頼のもとに駆けつけた内膳友晴が壮絶な戦いの末に討ち死にした

     真田氏は現在の長野県上田市真田町を本拠地として、中世から勢力を広げた土豪です。大河ドラマの主人公である真田信繁(幸村)の祖父・幸隆の代に武田信玄に仕え、「信州先方衆」の旗頭として武田勢の第一線で活躍したといわれています。

     一方の武田氏は、甲斐源氏を祖とする名家。19代当主の武田信玄は甲斐(現在の山梨県)と信濃(現在の長野県)を拠点とし、騎馬軍団を率いた戦国最強の武将と呼ばれました。常勝無敵の家臣団のなかでも精鋭とされる武将は、後に「武田二十四将」と呼ばれ、このなかに幸隆や昌幸(信繁の父)、武田家滅亡のキーマンとなる穴山梅雪や小山田信茂も名を連ねています。

     ドラマは信玄の死後、武田氏が滅亡寸前に追い詰められた場面から始まりました。1575年(天正3年)の長篠の戦いでの大敗を機に、武田氏は弱体化。1581年(天正9年)、徳川家康に高天神城(静岡県掛川市)を奪還された際、勝頼が味方に援軍を出さなかったことがきっかけとなり、堰を切ったように家臣の造反が続出します。そして1582年(天正10年)、勝頼の義弟・木曽義昌が織田方に寝返ると、好機とばかりに織田信長・徳川家康連合軍に北条氏政軍も加わった大軍が総攻撃を開始。勝頼の実弟・仁科盛信が守る高遠城(長野県伊那市)が落城すると、ついに勝頼は四面楚歌となりました。

     武田氏は信玄の父・信虎の代から躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)(山梨県甲府市)を居城としていましたが、勝頼は信長の襲来に備え、より戦闘力の高い新府城(山梨県韮崎市)を築き移っていました。しかし、当時、新府城はまだ完成していなかったため、太刀打ちできないと判断。勝頼は、新府城を焼き払って逃亡することを決意します。

     このとき、「我が岩櫃(いわびつ)城(群馬県東吾妻町)へ退き、再起を」という真田昌幸の進言を断り、小山田信茂の岩殿城(山梨県大月市)へ入ることを決断します。この判断が、結果的に勝頼の命取りになりました。

    • 甲斐大和駅(山梨県甲州市)前にある武田勝頼公銅像
      甲斐大和駅(山梨県甲州市)前にある武田勝頼公銅像

     信茂は勝頼を裏切り、織田方へと離反。「長年仕えた主君を裏切るとはなんてひどい男だ!」と憤りを覚えますが、当時は小山田氏に限らず、地方豪族が主従関係よりも家名存続の道を選ぶのは珍しいことではありませんでした。名門・武田氏であればそう簡単に離反するはずもなく、つまり武田氏の威信はそれほどまで失墜していたわけです。岩殿城への入城を拒否されて行き場を失った勝頼は、嫡男・信勝とともに天目山(てんもくざん)(山梨県甲州市)で自刃。武田氏は滅亡しました。

     武田氏の滅亡は、真田氏にとっても一大転機となりました。主君を失い織田・徳川・北条・上杉という強大勢力に囲まれた真田氏は、生き残りをかけて戦国という大海原へと()ぎ出すことになるのです。

    関連サイト:歴史博物館・信玄公宝物館(山梨県甲州市)

         :高天神をめぐる戦い(静岡県掛川市商工観光課)

     

    2016年01月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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