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    国際

    慰安婦問題をめぐる意外と知らない韓国人の本音

    新潟県立大学教授 浅羽祐樹
     日韓両国民の心のひだにトゲのように突き刺さった慰安婦問題。日本に伝わってくる情報では、昨年末の日韓合意にもかかわらず、韓国世論はこの問題が解決したとは、みじんも思っていないようにみえる。むしろ、「蒸し返し」の可能性さえあるらしい。ところが、韓国の各種世論調査を子細に分析すると、こうした見方はかならずしも核心を突いていないと、浅羽教授は指摘している。果たして、この問題を解決する処方箋はあるのか。そのヒントになる「韓国人の本音」について、浅羽教授に寄稿してもらった。

    相手国政府と、自国世論を「両面にらみ」

    • 慰安婦問題について日韓合意に至り、握手を交わす岸田外相(左)と韓国の尹炳世外相(2015年12月28日、撮影)
      慰安婦問題について日韓合意に至り、握手を交わす岸田外相(左)と韓国の尹炳世外相(2015年12月28日、撮影)

     慰安婦問題は、韓国や日韓関係に関する議論の中でも特に、「通説・俗説」がはびこっている。感情的にならず、論理的かつ衡平に、物事を見ることが重要である。そのためには、自分のかけているレンズが合っているかどうか、認識の枠組み自体を徹底検証する必要がある。小論では、日韓「慰安婦」合意をめぐる韓国世論を素材に、世論調査の読み解き方、ひいてはメディア・リテラシーについて考えてみたい。

     昨年末に電撃的に日韓外相会談が開催され、ついに慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決」と合意された。

     この問題は、1991年に金学順(キム・ハクスン)氏が「慰安婦だった」とカミングアウトして以来、常に日韓関係における「トゲ」だった。特に朴槿恵(パク・クネ)大統領は、「解決されない限り、日韓首脳会談に応じない」「国際社会に対しても訴える」というスタンスで一貫していた。日本政府としては、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」としつつも、これまでもアジア女性基金などを通じて「人道的な見地」から対応をしてきたが、今度こそ「片付く」のか、という疑いが強い。

     国民の間にも、今回、合意がまとまったこと自体は評価しつつも、「蒸し返し」に対する不信感がある。

     NHKが1月11日までに実施した世論調査によると、日韓「慰安婦」合意について、「大いに評価する」(14%)と「ある程度評価する」(50%)と合わせると、肯定的評価が6割を超えている。他方、「あまり評価しない」(22%)と「まったく評価しない」(6%)を合わせても3割に及ばない。これまでも、「それなりに謝った」「改めて繰り返す必要はない」という世論が、支持政党や内閣支持を問わず、広く見られていた中で、安倍晋三首相としては「責任は私がとる」と明言していたが、この分布であれば、参院選(や衆院選とのダブル選?)を前に、政治的な負担にはならないだろう。

     「最終的かつ不可逆的な解決」については、この問題が日韓間で懸案となることは「今後はない」という回答は8%にすぎず、「今後もある」と悲観的なのが59%も占める。だからこそ、安倍首相としては、「不可逆的」をいかに担保するのかにこだわったと言える。少女像の移転は、韓国政府も合意を履行するというコミットメントの証しになる。

     民主主義体制における外交は、日韓ともに、常に、相手国政府との合意と、自国世論による同意という「両面(にら)みのゲーム」になっているというわけである。その分、合意後も、双方、相手国政府が立たされている状況を踏まえた上で、適切に対策を講じなければならない。

     

     

    2016年01月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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