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    国際

    地獄は解消されるか? 中国・トイレ大革命のビフォー&アフター

    フリージャーナリスト 中島恵
     中国のトイレは 阿鼻叫喚 ( あびきょうかん ) をきわめ、外国人が入った途端、確実にもだえ苦しむ。「ニーハオトイレ」とも呼ばれ、想像するだけでも恐ろしい空間だ。それが今、中国政府の大号令下、文化ならぬトイレ大革命が進行中なのだという。果たして、悪弊は絶てるのだろうか。中国の市井の事情に詳しい中島さんが、ニーハオトイレのビフォー&アフターを写真(最終ページに掲載)とともに、生々しくリポートする。

    変化の兆しは本物か?

     「ううっ……。あぁ、く、苦しい……」

     ぐっと息を止めて片手で口を押さえながら、素早くトイレを済ませて外に飛び出す。あまりの悪臭に呼吸困難になりそうだが、無事にトイレを済ませられた安堵(あんど)感で、ひとまずほっと胸をなで下ろす。こんなことを1日に何度か繰り返す。だから中国に滞在しているときには水分はあまり取らず、できるだけトイレに行かないようにしなければならない……。これは四半世紀前、私の壮絶な(?)中国トイレ体験のひとコマだ。

     ところが、あれからウン十年――。中国のトイレは見違えるほどきれいになった。都市部では、トイレ内の空気もなんとか吸える。(場所によるが)汚物という“置き土産”もかなり減った。洗面台の水道の水もほぼ出るようになった。最近、私が主要空港などで見かける美しいトイレにいちいち感動し、その写真を撮りまくるので、洗面台の掃除をしている清掃員に(いぶか)しげな目で見られることもあるほどだ。

     それもそのはず、かつて中国のトイレといえば「汚い」「不衛生」「汚物が散乱」と3拍子そろっていて、筆舌に尽くしがたいほどひどかった。それが、ここ1~2年、急速に変化の兆しを見せているのだ。

     というのは、中国政府が昨年から本格的に「トイレ革命」に乗り出しているからだ。2017年までに全国計5万7000か所で公衆トイレを新設・改築するほか、農村部での水洗トイレの導入を急ぐことを習近平(シージンピン)国家主席が明言するなど、トイレ整備が急ピッチで進んでいる。李世宏(リー・シーホン)・国家観光局副局長が国営新華社通信に語ったところによれば、政府はトイレ美化のために125億元(約2250億円)を投じるという。政府の並々ならぬ気合が感じられるが、なるほど、年に2~3回ほど中国を訪れる私でも、目に見えてトイレがきれいになっていると感じるはずだ。

     中国の改革開放は1979年。一般の日本人が中国に行き始めたのは80年代半ばくらいからで、その頃、中国のトイレといえば、「ニーハオトイレ」が主流だった。

     隣との仕切りや扉がなく、便器以外何もないのが「ニーハオトイレ」だ。私が初めて中国に行ったのは1988年、北京の大学だった。大学の寮のトイレには仕切りがあったけれど、外出先のトイレ(寺院などの観光地)には仕切りがなく、トイレの最中に、よく隣に座っている女性に話しかけられて(まさしくニーハオ、と話しかけられたのだった)、顔から火が出るほど恥ずかしかった記憶がある。

     仕切りがあっても、仕切りの背が低いので、しゃがんでいるときには見えないものの、中腰になれば「まる見え」ということもよくあった。トイレは(よく言えば)中国人にとって社交・団らんの場、といった雰囲気で、かつての中国人はよくトイレでおしゃべりをした。

     

     

    2016年04月20日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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