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    自動車

    不安は当たった…三菱自動車、燃費不正

    モータージャーナリスト 御堀直嗣
     三菱自動車が、軽自動車の燃費データを偽装していた問題が明らかになった。昨年は、独フォルクスワーゲンの排ガス規制を巡る不正が発覚しており、自動車の性能試験での不正が相次ぐ実態は、業界全体の信頼を揺るがしかねない。2000年以降の大規模なリコール(回収・無償修理)隠し問題から立ち直ったかに見えた三菱自はなぜ、再び不正に手を染めたのか。モータージャーナリストの御堀直嗣氏が問題の背景に切り込む。

    軽自動車の燃費競争激化

    • 燃費不正が発覚した三菱自動車の本社(東京都港区)
      燃費不正が発覚した三菱自動車の本社(東京都港区)

     「またか…」というのが、今回の不正問題に対する私の率直な思いだ。そしておそらく誰もが同じ思いを抱いたのではないか。それと同時に、「なぜ?」とも思う。

     三菱自動車は、リコール隠しなど企業体質を問われる不祥事が相次いでから、ブランドの立て直しに邁進(まいしん)してきた。13年、リチウムイオンバッテリーの不具合が発覚した新型プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」のリコール(回収・無償修理)問題で、同社は報道陣に工場見学の機会を設け、不具合を生じた経緯の説明と、その後の改善対応を丁寧に説明するなど、情報開示に努める姿が印象に残っている。また、昨年は、小型SUV(スポーツ用多目的車)の次期モデルについて、目標とする性能が達成できていないとして発売を延期するとの発表も行っている。経営的には大きな打撃であったはずだが、果断に決意した。

     最近は、そうした真摯(しんし)な対応が目立っていたにもかかわらず、なぜ、今回のような不正が行われてしまったのか。

     不正の対象となった軽自動車は、11年に設立された三菱と日産自動車の合弁会社「NMKV(日産・三菱・軽・ヴィークル)」で企画・開発された。実際の車両開発作業や生産は三菱が請け負っているが、商品性や目標性能は両社の合意によって設定されてきたはずである。その際、燃費性能の設定に無理はなかったのだろうか。

     軽自動車の分野では、11年にダイハツの「ミライース」が1リットル当たり30キロ・メートルの燃費性能を実現してから、“燃費競争”の様相を呈している。それまでも、アイドリングストップ機構を装備した軽自動車で27キロ・メートル相当の燃費を達成した車種は一部あった。しかし、多くは20キロ・メートル台半ばの数値であったから、ミライースは一気に20%ほどの燃費向上を果たしたことになる。

     その後、リチウムイオンバッテリーを採用した新しいエネルギー回生システム「エネチャージ」を独自開発したスズキは、今日、アルトで1リットル当たり37キロ・メートルの燃費性能を実現するまでになっている。このスズキの方式については、高価なリチウムイオンバッテリーを、価格競争の厳しい軽自動車で採用する英断が下された。同様のシステムは、まだ他の軽自動車メーカーでは採用されていない。

     リチウムイオンバッテリーの採用について、スズキの技術本部長は私の取材に対し、「確かにコストはかかりますが、その分は車両全体(のコストダウン)で対応している」と答えた。ちなみに、他社の役員の一人は、「うちはスズキさんのようにリチウムイオンバッテリー分のコストを飲み込める体質にない」と語っている。

     それほど、ガソリンエンジンのみで30キロ・メートル台の燃費性能を出すのは厳しいことなのである。

     

     

    2016年04月22日 16時59分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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