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    生活

    安全vs監視の構図を超えて~防犯カメラ社会が行きつく先

    東京大学大学院准教授 樋野公宏

    「費用」が勝るか?「効果」が勝るか?

    • 足立区の住宅地に設置された防犯カメラ(筆者提供)
      足立区の住宅地に設置された防犯カメラ(筆者提供)

     さて、市民が防犯カメラを許容するかどうかは、設置の費用対効果によって決まる。まず、設置だけでなく維持や交換にかかる経費が、他の防犯手段との比較においてもう少し考慮されるべきであろう。心理的抵抗感の低下傾向は先に述べた通りだが、情報流出や悪用のリスクも「費用」に含める必要がある。

     一方の「効果」には、犯罪抑止と検挙支援が考えられる。後者については、目撃情報が得づらくなった昨今、防犯カメラの映像が様々な事件で検挙の決め手となったことがメディアによって報道されている。しかし、犯罪抑止に関しては、その効果を実証する研究成果は国内外ともあまり見られない。むしろ、粗暴犯など非合理的に遂行される犯罪に対しては効果がないことが明らかになっている。防犯カメラの抑制的利用を主張する日本弁護士連合会は、警察庁がJR川崎駅東口に設置した防犯カメラに有意な効果が見られなかったことを指摘している(12年1月19日意見書)。

     ここで、防犯カメラに対する一般住民の考えを明らかにするため、東京・足立区で最近開発された戸建て住宅地(約200戸)において、全世帯を対象に行ったアンケート調査の結果を紹介したい。その住宅地は防犯性の高さがひとつの売りになっており、8台の防犯カメラをはじめとする各種防犯対策が施されている。

     これらの防犯対策に対する評価を入居前と入居後に聞いたところ、ほとんどの防犯対策が評価を上げていた。このうち、防犯カメラを評価する住民の割合は入居前に95.1%だったのだが、入居後には90.0%に減少した。アンケートの自由回答では、「何かあった際に住民が映像を確認することができない」ことが理由として挙げられていた。

     一般的に、自治体から補助金を受けて民間団体が防犯カメラを設置する場合、自治体が設置する防犯カメラと同様の厳格な運用基準が適用される。捜査機関から法令の定めに基づく請求を受けた場合などを除いて、映像を閲覧することも提供することもできないのだ。よって、ほとんどの映像は使われないまま1~2週間で上書き、消去されることになる。先のアンケート結果は、身近に設置された防犯カメラについてさえ、どう運用されているかを知らない無関心な人が多いことを示している。

     

     

    2016年05月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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