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    生活

    ブランド品のパロディーはどこまで許される?

    弁理士 越場洋
     世の中に出回っている数々の「模倣」や「パロディー」。著作権や商標権などを巡って、争いごとになるケースも少なくない。最近では、スイスの高級腕時計ブランド「フランク・ミュラー」と、そのパロディー商品である「フランク三浦」の販売会社との争いが大きな話題になった。パロディー商品はどこまで認められるのか。著作権法や商標法などに詳しい弁理士の越場洋氏が、国内外の事例などを紹介しながら解説する。

    「フランク三浦」の商標登録は有効

    • 知財高裁によって商標登録が有効とされたパロディー時計「フランク三浦」
      知財高裁によって商標登録が有効とされたパロディー時計「フランク三浦」

     パロディー時計「フランク三浦」の販売会社が、商標登録を無効とした特許庁の審決を取り消すよう求めた訴訟で、知財高裁は先ごろ、取り消しを命じる判決を下した。知財高裁は、(1)「三浦」の部分が漢字であり、明らかな外国人の氏名である「フランク・ミュラー」とは区別できること、(2)フランク・ミュラーが高級路線なのに対して、フランク三浦は「チープさ」にこだわっており、目指す方向性が真逆であること――などを考慮して、2つの商標が混同されることはないと判断した。

     パロディーとは、他人の商品名や文章、絵画などを模倣した上で、何らかの独創性を加えて滑稽化・風刺化したものをいう。

     パロディーは他人の表現などを利用することを前提としているため、知的財産権の侵害と常に背中合わせである。日本では、著作権法、商標法、不正競争防止法など複数の法律で問題になり、それぞれ異なる基準で判断される。唯一共通するのは、「いずれの法律にもパロディーに関する規定は存在しない」という点である。

     それでは、各法律ではどのような基準で「パロディー」が判断されているのか、実例を交えながら見ていく。

    パロディーに関する法規定を有する国も

     今から十数年前、ベストセラー本「チーズはどこへ消えた?」の翻訳者と出版社が、パロディー本「バターはどこへ溶けた?」の出版社を著作権侵害だとして訴えたことがあった(「チーズはどこへ消えた?事件」)。「バターは~」の出版社は、憲法上の「表現の自由」を根拠に、このパロディー本を認めるよう主張したが、裁判所はこれを認めなかった。

     我が国ではこれまで、パロディーは主に著作権との関係で議論されてきた。著作権とは、小説や絵画、音楽などの著作者が、自らの著作物を独占的に利用する権利である。パロディーは他人の著作物を無断で利用し、改変するものなので、著作権を侵す可能性がある。

     ただし、絵画や写真などのパロディーは芸術的価値を有することが多く、また、政治的な批評や風刺などは、表現の自由や国民の知る権利の観点から、一定範囲で許容すべきとする社会的要請がある。そうした事情を内包するパロディーが、著作権侵害に当たるかどうかが議論になることが多い。

     しかしながら、著作権法にはパロディーについての規定がないので、裁判などで「形式的には著作権侵害だが、パロディーだから許される」と抗弁しても、上記の「チーズはどこへ消えた?事件」のように、認められない。表現の自由も、他人の権利を侵害してまでは認められないというのが、日本の法制度の限界だ。

     一方で米国では、著作権法に「フェアユース(公正な利用)」に関する一般規定がある。フェアユースとは、原著作物の利用の目的や態様が「公正な利用」と評価できるのならば、著作権侵害とはならないとする法理である。フェアユースに該当すれば、パロディーは著作権侵害とはならない。例えば、米映画「プリティ・ウーマン」の主題歌にもなった名曲「Oh,Pretty Woman」を基にしたラップ曲がフェアユースとして認められた事例がある。

     フランスでは、「もじり」「模作」「風刺画」が許されることが著作権法に明記されており、これらに該当するパロディーは許容される。イギリスでも、2014年の著作権法改正により、パロディーが著作権侵害とならないとする条文が導入された。原作にユーモアや風刺性を追加し、別の著作物としている場合は、著作権者の許諾なく利用できる。

     

     

    2016年05月17日 12時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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