<速報> リニア不正受注、鹿島と清水建設を捜索…東京地検特捜部など
    文字サイズ
    生活

    ブランド品のパロディーはどこまで許される?

    弁理士 越場洋

    著作権法上の「引用」か

     しかしながら、このようなパロディーについての規定を有する国は、世界でもまだ少数派である。日本の著作権法には、米国のフェアユースのような一般規定も、フランスやイギリスのようにパロディーを直接容認する規定も見られない。私たち弁理士や弁護士などが実務に当たる上では、パロディーにおける著作物の利用が著作権法上の「引用」に該当するかどうかが問題となる。

     この点について争われた有名な事件として、1970~80年代に争われた「モンタージュ写真事件」がある。雪山の斜面をスキーヤーが滑走している元の写真を利用して、雪山をタイヤが滑っているように加工した写真が著作権侵害に当たるかどうかが争われ、最高裁がタイヤを配した写真が著作権侵害に当たるとした事件だ。

     この時、最高裁は、パロディーが引用として認められるためには、(1)両者が明確に区別できること、(2)パロディー作品が主、元ネタ部分が従の関係にあること、の2つが必要だという基準を示した。その上で、著作者が持つ「同一性保持権(著作物の無断改変を禁じる権利)」にも配慮しなければならないと述べている。現段階ではパロディーに関する唯一の最高裁判例であり、現在でもパロディーの適法性を判断する上で重要な意味を持っている。

    元ネタの周知性に「タダ乗り」

     パロディーは、商標権との関係でも問題になる。商標とは、自己が取り扱う商品やサービスを、他人の商品・サービスと識別するために使用する文字や図形などのことだ。特許庁の審査を経て商標を登録することで「商標権」が発生し、その商標を独占的、排他的に使用できるようになる。ところが、登録商標が他人にパロディーとして使用されれば、商標権が侵害され、登録商標によって本来得られたはずの利益が得られなくなったり、商標のブランド価値を下げてしまう恐れがある。

    • 「白い恋人」の石屋製菓が「面白い恋人」の販売差し止めを求め、札幌地裁に提訴(2011年11月28日)
      「白い恋人」の石屋製菓が「面白い恋人」の販売差し止めを求め、札幌地裁に提訴(2011年11月28日)

     商標法にもパロディーについて直接規定する条文はない。商標権の侵害か否かを巡って争われる時は、裁判所は2つの商標の「外観・称呼(しょうこ)(商標の読み方)・観念」を総合的に考察し、具体的な取引状況を考慮して、商品の出所が混同される恐れがないかどうかを判断するとされる。

     これについては数年前、北海道土産として人気の「白い恋人」を製造・販売する石屋製菓(本社・札幌市)が、吉本興業の子会社が発売元の「面白い恋人」が商標権を侵害しているとして争った事例が記憶に新しい。結局、石屋製菓と吉本興業は、「面白い恋人」の名称を変更せずにパッケージを変えて主に関西地方での販売に限定するといった内容で和解したため、裁判所の判断を見ることはできなかった。しかし、仮に判決が出されていたとしても、パロディーであることが判断に直接の影響を与えた可能性は低いと考えられている。

     商標のパロディーは、その性質上、元ネタが世間一般に広く認識されていること(周知性)にタダ乗りするものだ。他人の商標を絵画などの表現の一部として用いるケースはともかく、自己の識別標識として利用する場合は、表現の自由などを根拠に保護されるべきケースは多くないだろう。

    不正競争防止法違反で差し止め、損害賠償も

     当然のことながら、商標権は商標登録がなければ発生しない。しかし、商標登録がなされていなくても、不正競争防止法上の問題が生じ得る。

     同法は、公正な競争を阻害する行為を禁止し、健全な市場を確保するための法律だ。商標法など登録が前提の法律では保護しきれない部分をカバーする役割を有する。他人の商品や商標を模倣したりパロディー化したりすれば、「公正な競争を阻害する行為」と見なされる可能性がある。例えば、元ネタが世の中に広く知られている場合、パロディー商標が元ネタに類似していると判断されれば、同法違反で差し止めや損害賠償の対象となることがある。

     「面白い恋人事件」でも、石屋製菓側は「白い恋人」の周知・著名性を主張したようだ。もしも裁判が継続されていたら、彼らの主張が認められ、「面白い恋人」は同法違反で販売差し止めなどの対象となった可能性は十分ある。

     米国では、商標登録に基づく商標権の行使においては、日本同様、パロディーについての規定は存在しない。一方で、著名商標(未登録のものを含む)については、パロディーが許されるケースがあることが法律で規定されている。

     例えば、「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)」のパロディー商品で、犬がかむおもちゃの「Chewy Vuiton」が許された裁判例がある。裁判所は「(Chewy Vuitonは)パロディーに成功している」と述べたが、パロディーに関する明文化された規定がない日本では、このような基準を採用することは難しいだろう。

     一方、韓国も日本同様、不正競争防止法ではパロディーについての規定はない。つい最近、「LOUIS VUITON DAK(ルイ・ヴィトン・ダク)」なる名称の鶏料理店が、同法違反で訴えられ、敗れている(韓国語で「トンダク」は「鶏の丸焼き」の意味)。この店では「DAK」の部分のみ色を変えた看板を用いていたため、一見して「LOUIS VUITON」の部分が独立して目立っていた。「VUITON」のつづりが“本家”と異なるが、軽微な差であり、類似と判断されたことに一定の合理性があるように思われる。

     

     

    2016年05月17日 12時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP