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    国際

    もう一つの「パナマ」問題…バナナに迫る危機

    北海学園大学教授 小松かおり
     「パナマ文書」が世間をにぎわせているが、その裏でもう一つの「パナマ」問題が進行している。それは「新パナマ病」。バナナに壊滅的な打撃を与えるこの病気が、アジアなどで広がっているという。商業用に生産されるバナナは、この病気で一度壊滅している。バナナが食卓から消えてしまう日は来るのだろうか。バナナに詳しい北海学園大学の小松かおり教授に解説してもらった。

    バナナをむしばむ「新パナマ病」

    • カメルーンのバナナ農園(2012年、小松氏撮影)
      カメルーンのバナナ農園(2012年、小松氏撮影)

     最近、「新パナマ病」と呼ばれる病気によって、バナナが絶滅の危機に(ひん)しているというニュースが流れている。最も安く確実に手に入る果物であるバナナが本当に消えるのか?という不安を持つ人も多いかもしれない。その答えは、「ある種のバナナは、つまり、わたしたちが今食べている『キャベンディッシュ』という品種のバナナは、激減する可能性がある」というものだ。

     パナマ病とは、「Fusarium oxysporum」という真菌(カビの仲間)のうち、「cubense」という特定のタイプがバナナに引き起こす病気である。トマトやサツマイモ、葉物野菜を標的にするタイプもある。「新パナマ病」は、パナマ病の一種だ。

     パナマ病は、土から根を通して感染し、水を吸い上げる道管を詰まらせる。罹患(りかん)したバナナはだんだん葉が黄色くなり、やがて枯死する。症状が出るまでに数か月かかることもあるので、気がつくと、周りのバナナがすべて罹患していることもある。一度土壌が汚染されると、農薬などで抑えることはできず、数十年間、汚染が続く。

    一度壊滅に追い込まれた輸出用バナナ

     バナナを狙うcubenseタイプの中にもさらにいろいろな遺伝子の変異があり、特定のrace(系統)のものが一部の種類のバナナを狙う。

     有名なのは、アメリカの企業が中米で大規模なバナナ生産を始めた20世紀初頭に見つかった「race1」だ。race1は半世紀かけて、当時輸出用バナナの主役だった「グロスミッチェル」という品種の商業栽培を壊滅に追い込んだと言われる。グロスミッチェルは、果実が大きく、皮が厚くて、果房を丸ごと積みあげても傷まない品種だったという。

     当時の輸出用バナナのほとんどを占めていて、現在のキャベンディッシュと同じ位置にあった。それが、壊滅したのである。

     新パナマ病と呼ばれているのは、1990年、キャベンディッシュに感染したことが台湾で確認されたTR4(tropical race4)という系統だ。20年間で中国からアジア島嶼(とうしょ)部までに広がり、ここ数年は、中東やアフリカでも見つかっている。

     TR4に限らず、パナマ病に有効な農薬はないと言われている。土地ごと水に浸して洗浄する方法も試されたが効果はなかった。有効な対策としては、今のところ、圃場(ほじょう)(畑)を変えることだけ。最初にパナマ病が流行(はや)ったときも、汚染された土地は捨てて次の場所に移る、ということを繰り返したのである。

     キャベンディッシュは、race1には強いが、TR4には抵抗力がない。グロスミッチェルと同じ被害を受ける可能性は十分に考えられる。

    2016年06月06日 09時36分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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