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    国際

    習政権の大誤算、強気の姿勢が招いた「中国離れ」

    北海道大学公共政策大学院専任講師 西本紫乃
     このところ中国外交は失点続きである。中国のあまりに強引な姿勢が嫌気を誘い、台湾に独立志向の強い民進党の 蔡英文 ( ツァイインウェン ) 政権が誕生した。5月に日本で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では南シナ海における中国の海洋進出問題が取り上げられ、首脳宣言に「懸念」が盛り込まれた。欧州ではこれまで親中派と見られていた国々が距離を置き始めている。今月7日には東シナ海で中国軍機が米軍機に異常接近した。国際社会の「懸念」には耳を貸さず、強硬姿勢を続けてきた中国だが、世界のあちこちで静かに「中国離れ」が進行している。この背景を中国事情に詳しい北海道大学公共政策大学院専任講師の西本紫乃さんに分析してもらった。

    香港、台湾に現れた変化

    • 香港で6月4日に開かれた天安門事件の犠牲者を追悼する集会(AP)
      香港で6月4日に開かれた天安門事件の犠牲者を追悼する集会(AP)

     6月4日、天安門事件から27年のこの日、香港では今年も事件で犠牲になった人々に対する追悼集会が開かれた。参加者の数は12万人にも上ったが、昨年と比べて1割近く減った。これまでこの集会の主要な参加グループだった学生たちが今年は参加を見合わせたためだ。

     香港の若い世代が今回の天安門事件追悼集会に参加しなかったのは、中国の民主化に対する期待が薄れたこともあるが、それ以上に、彼らの目指す方向が香港における民主の実現という、より密接に自分たちの将来にかかわる問題になったからだ。「香港は香港、中国は中国」と割り切った考え方をする人が若い世代を中心に増えている。

     中国離れは香港だけの現象ではない。台湾でもまた、若い世代を中心に「台湾は台湾、中国は中国」と、中国と自分たちを切り離して考える人が増えている。

     蔡総統は5月20日に行われた就任式での演説で、「台湾は民主を宗旨とし、人権や自由という普遍的な価値を大切にしてきた。この価値観を共有できる米国や日本、欧州各国との友好関係を大事にする」と明言した。蔡総統の言葉には、彼女を総統に押し上げた台湾の人々の気持ちが反映されている。

     中国発の問題がいち早く顕在化するのが、香港や台湾だといわれる。天安門事件の追悼集会、蔡政権の誕生、一見関係なさそうな二つの出来事だが、習近平(シージンピン)政権下の中国とは距離を置くという点でつながっている。

     目覚ましい経済発展で中国は豊かになった。国が豊かになれば、個人の意見がより尊重されて多様性が受け入れられるようになっていく。ところが、習政権下では、情報統制や伝統的な道徳観念を押し付ける政治宣伝など、政治権力が人々の生活の身近なところにまで介入し、全体的な社会統制の強化がなされている。

     つまり、時代の流れに逆行しているのである。そうした中国の現政権の強権的なやり方への反発が、香港や台湾の人々の「中国離れ」となって現れているのだ。


    2016年06月09日 16時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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