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    経済

    相次ぐ降板~日本にプロ経営者は根付くのか

    ジャーナリスト 岡村繁雄
     株主総会のシーズンを迎え、役員の交代が相次いで発表されている。かつては未来の社長を夢みて下積み時代の苦労に耐えたニッポンのサラリーマン。会社に尽くし続けた社員から社長を選ぶのは、終身雇用、年功序列とともに日本企業の伝統だった。しかし、そうした慣行は過去のものになりつつあるのかもしれない。マクドナルドからベネッセ、ローソンからサントリーへと名だたる大企業を経営者として渡り歩く「プロ経営者」が登場している。今後もこうしたケースは増えるのか。岡村氏に寄稿してもらった。

    マックからベネッセの原田氏、GEからLIXILの藤森氏

    • 原田泳幸氏
      原田泳幸氏
    • 藤森義明氏
      藤森義明氏

     「ああ、やっぱり」。このニュースに接した何人もの人がそう思ったかもしれない。5月に起きたベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長の退任劇である。2年前の2014年6月、彼は「プロ経営者」として日本マクドナルドホールディングスの会長からベネッセHDのトップに転じた。しかし当初から、外資で過酷な店舗運営がたびたび取り沙汰されたマックと、岡山県に本拠地を置く教育産業の老舗では企業風土もおのずから違うと危惧されてもいたのである。

     それが図らずも的中してしまったことになる。確かに、就任直後に主力の通信教育講座「進研ゼミ」などの顧客情報流出が発覚したことは逆風だったろう。実際、今年4月時点の進研ゼミ会員数は、前年比で約10%減っている。とはいえ、原田氏のようなトップにとっては結果がすべてだ。15年3月期の連結最終損益が107億円の赤字。16年3月期82億円の赤字を計上していたとなれば弁解は許されない。

     プロは結果を示さなければならないという意味においては、LIXILグループの藤森義明社長も同じだ。彼の場合は、ゼネラル・エレクトリック上級副社長からの転身である。就任後はGEの名経営者だったジャック・ウェルチ氏流の果敢な業容拡大を図った。けれども、買収したドイツの水栓メーカー・グローエ傘下の中国企業の不正会計を見抜けず、660億円の特別損失に追い込まれてしまい、6月の株主総会後に退任する。

    外資系の日本法人トップは中間管理職?

     この2人の降板は、日本企業におけるプロ経営者のあり方に少なからぬ議論を呼んだ。彼らは、異なる業界や有名企業での経営手腕を買われ、外部から招聘(しょうへい)されるトップマネジメントだ。その役割は、グローバル化の加速する経営の現場にあって、企業が成長していくためのスピード感のある社内改革と戦略立案である。もちろん、短期間での利益向上も期待される。反面、これまで社員が慣れ親しんできた仕組みや価値観も変えてしまう。今回の2社の出来事が投げかけるのは「はたしてプロ経営者が日本に根付くのか?」という疑問である。

     ところで、原田氏や藤森氏のような外資系出身者をプロ経営者として招くことに警鐘を鳴らしてきた人物もいる。大手ヘッドハンティング会社サーチファームジャパンの武元康明社長は「彼らはいずれも日本法人のトップだ。藤森氏の上級副社長という肩書も日本でいうところのナンバーツーではない。米国本社から見ればミドル、すなわち中間管理職だ。それなのに経営の全権を任せるのは酷ということだろう」と話す。外資系企業の日本法人トップと、日本企業のトップでは、権限も違えば風土も違う。必ずしも、以前の企業での経験が生きるとは限らない。

     

     

    2016年06月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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