文字サイズ
    経済

    相次ぐ降板~日本にプロ経営者は根付くのか

    ジャーナリスト 岡村繁雄

    サントリーや資生堂が外部から社長を招いた狙い

    • 新浪剛史氏
      新浪剛史氏

     その意味で、サントリーホールディングスのトップ交代はやや事情が異なる。佐治信忠会長兼社長が社長を退き、ローソンの社長を務めた新浪剛史氏を創業家以外では初のトップとして招いた。同社はこれまで、4代続けて創業家の社長が経営を担ってきた。

     もちろん、酒造りという伝統的な業界にあっては同族経営のメリットもあったはずだ。けれども、少子高齢化による国内市場の縮小、それを打開するための食品部門の強化、海外事業の推進という視点に立てば、新浪氏のような国際派経営者と彼の持つ人脈が必要だったのだろう。

    • 魚谷雅彦氏
      魚谷雅彦氏

     売り上げの減少傾向が続いていた資生堂は2013年12月、日本コカ・コーラで社長経験のある魚谷雅彦氏を社長とした。資生堂が外部の人材を社長に招いたのは、1940年に三越出身の松本昇氏が2代目社長に就任して以来のこと。魚谷氏は日本コカ・コーラ時代に缶コーヒー「ジョージア」をヒットさせたマーケティングのプロ。異業種からの参入や少子化で市場が縮小傾向にあるなか、ブランド力や収益力の強化を期待されての就任だった。

     そして、プロ経営者の強みは、外部の企業で経営にあたった経験から、しがらみのない第三者の視点で、改革を主導すること。魚谷氏は、世界6か所の地域本社に権限を移譲するなど、顧客や現場の声を重視し、現場の士気を高めるための組織改革を打ち出している。こうした企業での改革の成否も、日本で今後、プロ経営者が定着するかどうかに影響を及ぼすことになるだろう。

    日航での稲盛氏にみるプロ経営者成功の条件

    • 日本航空会長当時の稲盛和夫氏
      日本航空会長当時の稲盛和夫氏

     では、これまで日本におけるプロ経営者の成功例はないのか……。『人事部はここを見ている!』などの著書があり、日本企業の人事に詳しい溝上憲文氏は、その条件として「ベンチャーあるいはオーナー経営者が持つような強烈な個性とリーダーシップ」を挙げる。最近でいえば、2010年に日本航空会長に就任し、再建した稲盛和夫氏がそうだという。京セラ、KDDIを創業した経営者であり、実績も申し分ない。しかも、80歳を目前にしての国への滅私奉公である。

     溝上氏は「当時の日航は、もはや“死に体”だった。つまり、新しいトップがすべてを刷新できる環境だったといっていい。そこに登板した稲盛氏は、現場を回り官僚主義を排して、社員に航空会社もサービス業だとの意識改革を促していく。しかも、自分の右腕である京セラ役員も連れていき、京セラ成長の原動力であったアメーバ経営を根付かせている。その間、抵抗勢力がやめていきリストラが進んだことも大きかった」と説明する。

     確かに、稲盛氏のように“産業報国”の使命感を持った人が企業に入れば、力技で速やかな改革もできる。しかし、そうした人物はそうそういるものではない。安易な人選をしてしまうと、ベネッセやLIXILの二の舞いを演じてしまう。とはいえ、国際競争は日本企業の足踏みを待ってはくれない。その打開策として、これからもプロ経営者という選択肢は残るだろう。だがその場合には、導入する側に自社の経営風土を考えた判断が求められることになる。

    2016年06月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP