新しい価値観 買わずに「レンタル」する理由
物を極限まで所有しない「ミニマリスト」というシンプルなライフスタイルが話題になっている一方で、人間の「彼女」や高級家具、果ては無人島までレンタルできるサービスが人気を呼んでいる。「モノを買うのはダサい」という新しい価値観を持つ人たちが増え、買わずに「レンタル」する時代が来ていると、レンタル産業に詳しい船井総合研究所の藤本翔さんが分析する。
バブル時代に消費し続けた日本人
いつの間にか、日本人に「モノを買うのはダサい」という全く新しい価値観が生まれ始めている。
経済成長が著しい1980年代後半から90年代前半のバブル時代には毎日新しいモノを求め、大人から子供までがモノを消費し続けた。街中でタクシーを止めるために1万円札を頭上にあげる、なんて話はもはや伝説になってしまっている。
バブル時代を経験した日本人からすれば、まるで異国文化のように感じる「モノを買うのはダサい」という新しい価値観。この価値観がなぜ日本人に生まれ始めたのか。そしてこうした価値観に共感する新しい産業について解説していきたい。
所有欲から使用欲への変化
中国人の「爆買い」を見ているとわかる通り、国の経済が急激なスピードで世界トップクラスになると、国民はこれまで我慢していた「所有欲」を爆発させる。つまり、「モノの量」と「幸福度」が比例する。これが所有欲だ。
その反対に「使用欲」という言葉もある。
使用欲とは目的に合わせて、必要最低限だけ使うことができれば十分、要するに、「目的の達成」という欲を満たすツールとしてモノがある状態だ。日本人のモノに対する見方や、欲との相関関係が「所有欲」から「使用欲」へシフトしていると言える。
その理由として挙げられるのが、約20年もの間続いたデフレ経済。これにより所得階層が大きく変化した。80年代には「1億総中流社会」と呼ばれ、世帯の年収がほぼ横一線で並んでおり、皆が同じような家に住み、皆が同じような車に乗っていた。
しかしこれが90年代に入ると、所得の階層が細分化されるようになってきた。そして明確な所得格差が誕生した。
2000年代に入るとその所得格差はさらに大きくなった。こうして生まれた消費変化のひとつが「欲しいけど買えない層」による「所有欲」の消滅だ。