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    経済

    ソニーは再び「夢のある製品」を生み出せるか?

    経済ジャーナリスト 片山修
     長らく業績不振にあえいでいたソニーが「復活」を遂げつつある。巨額赤字から脱却し、2016年3月期には3年ぶりの税引き後黒字を計上した。戦後、トリニトロンカラーテレビやウォークマン、ハンディカムといった革新的な製品を次々と世に送り出した日本を代表する企業も、近年はエレクトロニクス部門などの不振に苦しみ、大規模な構造改革を強いられていた。ソニーはどう変わったのか。経済ジャーナリストの片山修氏が解説する。

    二つの“幻想”から抜けきれず

     日本の電機メーカーは、高度成長期に「量の競争」に終始した。右肩上がりの経済環境の下では、量を制する者が市場を制したのだ。「売り上げ至上主義」である。

     ところが、低成長期を迎えて、各社の経営の軸は「量から質へ」と転換した。だが、売上高の“(わな)”にはまったソニーは、そこから抜け出すのに10年以上かかった。

    • ソニーはようやく業績不振から抜け出したのか(東京・港区のソニー本社)
      ソニーはようやく業績不振から抜け出したのか(東京・港区のソニー本社)

     振り返れば、長い道のりだった。

     1997年度に過去最高の経常利益を計上して以降、ソニーの業績は低迷した。2007年度には北米市場のバブル景気のおかげで営業利益が過去最高となり、業績はV字回復を達成したかに見えた。だが、08年9月のリーマン・ショックを受けて、業績は再び暗転。11年度には、4550億円という過去最大の連結税引き後赤字に陥った。

     なかでも不振を極めたのが、中核事業であるエレクトロニクス部門だ。不振の原因は、ソニーが二つの“幻想”から抜けきれなかったからだ。その最たるケースがテレビ事業だった。

     一つは、売り上げが増えれば、開発コストを賄うことができ、赤字が解消できるという“幻想”である。ソニーは09年に発表した中期計画で、液晶テレビの販売台数を12年度に4000万台とする目標を掲げた。しかし、国内経済の低成長に加えて、デジタル商品が汎用化して品質や機能などに違いを見いだしにくくなったことや新興国メーカーの台頭という環境下で、売り上げ至上主義は通用しなかった。結局、販売目標には遠く及ばず、テレビ事業は05年から10年間にわたって赤字を垂れ流し続けた。

     もう一つは、量を拡大して市場シェアを高めれば、プライスリーダーになれるという“幻想”である。しかし、値決めはとっくに家電量販店に握られ、メーカー側はその力を失っていた。

     これらは、ソニーが高度成長期の成功体験に固執した結果である。他の企業と同様に、ソニーも日本の“モノづくり神話”に足をすくわれたといっていい。

    2016年06月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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