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    政治

    参院選、損したのは誰か

    読売新聞調査研究本部主任研究員兼編集委員 伊藤俊行

     スポーツなら「勝負は結果が全て」という考え方が説得力を持っても、民主主義は違う。勝ち方、負け方も重要だ。7月10日に投開票が行われた参院選も、全体の獲得議席だけみれば自民、公明両与党が「勝者」で、改選議席を減らした民進党が「敗者」だ。世界経済の不透明感が増す中で、安倍晋三首相の政権基盤が強くなったことを国際市場が好感したことから、与党の「勝利」は日本にとって「得」だったとの分析も聞こえてくる。ただ、選挙結果を子細に探ると、議席の多寡だけでは見えない「勝ち負け」があり、損得計算もそれほど単純ではない。

    異例の現職2閣僚落選

    • 参院選で落選した岩城法相(左)と島尻沖縄・北方相
      参院選で落選した岩城法相(左)と島尻沖縄・北方相

     自民党は、原発事故の影響を抱える福島と、米軍基地問題が深刻な沖縄の2県では「敗者」だった。

     どちらの県にも、戦後、自民党政権が中心になって進めてきた政策が、「理不尽な不利益」をもたらしたと考える住民が多くいる点で共通している。政府と地方自治体の考え方が鋭く対立する象徴的な場所でもある。

     その両県で自民党は参議院での議席がゼロになった。しかも、議席を失ったのが、福島で岩城光英法相、沖縄で島尻安伊子沖縄・北方相と、現職閣僚2氏だったことで、安倍内閣の福島や沖縄に関する政策が地元では厳しく評価されていることを印象づけた。15年9月の内閣改造で初入閣を果たした2氏は、当初から政治資金などをめぐる醜聞が国会で追及されるなどしていたから、属人的な要素が敗因の大きな部分を占めていたことは間違いない。とはいえ、前回までの参院選の歴史で現職閣僚が落選したのは、自民党の橋本竜太郎内閣の大木浩環境庁長官(1998年)と、民主党と国民新党の連立政権だった菅直人内閣の千葉景子法相(2010年)の2度しかない。2閣僚の同時落選は極めて異例だ。

     橋本首相は参院選直後に、菅首相も1年もたたないうちに、退陣の憂き目に遭っている。安倍首相は勝敗ラインとした「自公で改選定数の過半数」を優に超え、政権基盤をより盤石にしたものの、中央と地方の対立が深刻になっていけば、政権のつまずきになりかねない。福島や沖縄ばかりでなく、10月投開票の知事選を控える新潟県で、自民党候補が野党統一候補に敗れたのも、与党にとって「1敗」以上の打撃がある。知事選の最大の争点が原発の再稼働問題になると見られているからだ。今回の参院選の結果は、安倍政権に対し、より一層、中央と地方の亀裂を埋める努力を促したとみることもできる。

     一方、与党には「勝ち方」をめぐる問題もあった。それは何だろうか。


    2016年07月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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