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    経済

    英アーム買収 孫正義を駆り立てたものとは

    嶋 聡(多摩大学客員教授・前ソフトバンク社長室長)

     ソフトバンクグループは、英半導体設計大手アームホールディングスを約240億ポンド(約3.3兆円)で買収すると発表した。日本企業による海外企業の買収案件としては過去最大となる。世界の半導体大手メーカーを顧客に抱えるアームの買収により、あらゆるモノをインターネットにつなぐ「IoT」関連事業を強化するのが狙いと言われている。巨額の企業買収により、事業領域を拡大してきたソフトバンク。同社社長室長を8年務め、「孫正義社長の懐刀」と呼ばれた多摩大学客員教授の嶋聡氏に、孫氏の思いを寄稿してもらった。

    • アーム買収を発表するソフトバンクグループの孫正義社長(2016年7月18日、ロンドン市内で)
      アーム買収を発表するソフトバンクグループの孫正義社長(2016年7月18日、ロンドン市内で)

     ソフトバンクグループが3.3兆円で買収すると発表したイギリスの半導体設計大手アームホールディングス。スマートフォンや自動車向けのCPU(中央処理装置)における中核技術を持つ。本社は、経済学の巨人、ケインズが教鞭(きょうべん)を執ったケンブリッジにある。

     ケインズは、今回の孫正義社長の決断を見て拍手しているに違いない。ケインズは時代を(ひら)くのは企業家の「アニマル・スピリット」であると唱えていた。「企業家の投資行動の動機となる、将来への期待」を意味するアニマル・スピリットを、孫氏が体現していると考えるはずだからである。

     孫氏は買収を発表した18日の記者会見で、こう発言した。

     「アームはIoT(モノのインターネット)分野のリーダーだ。これから来るパラダイムシフト(枠組みの転換)の初期段階で投資できることに興奮している。大きなチャンスがある」

     将来のはるか先を見た企業活動は、時代を進め、ビジネスチャンスを生み、社会全体に利益をもたらすものだ。

     「経営するとき、財務やCFO(最高財務責任者)の話だけを聞いていたら、飛躍的に成長させることはできない」と孫氏は言う。巨額の投資である。失敗すれば、今までの実績がすべて水泡に帰すかもしれない。このアニマル・スピリットが合理的計算を凌駕した。「60代で引退する」と宣言している58歳の孫正義にとって、おそらく最後の勝負である。

    2016年07月25日 11時34分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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