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    生活

    男性の大腸がん急増、だがそれで死ぬべきではない!

    北青山Dクリニック院長 阿保義久
     男性の大腸がんが最近、急増しているという。食生活の欧米化などが原因と言われる。「がんになったらどうせ死ぬ」と考えている人もまだまだ多いようだが、「大腸がんは治る確率が高い」と訴えるのは、がん治療の専門医で北青山Dクリニック院長の阿保義久医師だ。阿保医師にその理由と注意点を解説してもらった。

    がんに関する情報が続々

    • (写真はイメージ)
      (写真はイメージ)

     日本におけるがん制圧の中核拠点といえば、国立がん研究センターです。がんの診療はもとより、研究、技術開発、治験、調査などを広範に行っています。そんな同センターから、今年に入って、がんに関する情報提供が盛んに行われています。

     今年1月、全てのがんの10年生存率を初めて公表したのを皮切りに、6月には男性の大腸がんが急増していること、がんの種類によって罹患(りかん)率に地域差があることが示されました。7月には今年の「がんと診断される患者さん」の見込み数が101万200人にのぼり、初めて100万人を突破する可能性のあることが発表されました。

     「日本人の3人に1人が、がんで命を落とす時代」とよく言われます。最近の報道でも、がんで亡くなった芸能人・著名人の名前が日常的に耳に入ってくるようになりました。7月26日に亡くなられたピアニストの中村紘子さんも、大腸がんとのことでした。「がんはひとごとではない。致命的で非常に怖い病気」という認識が皆さんの中にもあるのではないかと思います。

    がんの大半は治せる可能性がある

    • (写真はイメージ)
      (写真はイメージ)

     しかし、今回のがん生存率の集計で、がん全体の「10年相対生存率」がおよそ60%におよぶことは、意外と皆さんの耳に届いていないのではないでしょうか?

     「10年相対生存率(%)」とは、がん治療をした人で10年後に生存している人の割合(=実測生存率)と、日本人全体(対象者と同じ性別、年齢分布)で10年後に生存している人の割合(=期待生存率)を比べた指標です。実測生存率には、がん以外による死亡も含まれるため、がん以外の死因で亡くなった人の影響をできる限り補正しようというのが相対生存率です。がん治療における治癒率を、より高い信頼性で評価することができます。

     この集計は、早期のがんだけでなく、進行がんも含む全てのがんを対象に行われています。確立された治療法のない末期がんも含むことを考えると、検診を怠らず、早期にがんを発見すれば、多くのがんは治せる可能性があることを意味します。

     「がんになったら治らない」「どうせがんになったら死ぬのだ」という考えにとらわれて、がん検診を受けることから足が遠のいている方もいらっしゃると思います。しかし、がんは高血圧や糖尿病と同様に「慢性疾患」であり、積極的に検診を受け、早期発見、早期治療に努めれば、治すことが可能だということを皆さんに強く認識していただきたいのです。

     「がんは遺伝するもの」「親族にがんだった人がいるから、自分もいずれはがんになる」と恐れ、不安に陥っている方も少なからずいらっしゃるようです。しかし、仮に親ががんだからといって、自分が必ずがんになるわけではありません。高い確率で遺伝するがんは全体の5%未満ほどでしかありません。がんに影響する要因のおよそ70%は、喫煙、食事、運動、飲酒などの生活習慣が占めるという報告もあるのです。

     さらに、地域によってがんの罹患率に差があるということは、その土地その土地の生活環境や食事の影響などを受けやすいという可能性も示唆しています。このように、がんが発生する原因としては、生活習慣など後天的な要素の方が圧倒的に多いのです。

    2016年08月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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