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    国際

    やまぬ人種対立、米国の白人を覆う閉塞感

    関西大学教授 大津留(北川)智恵子
     米国で相次いだ白人警官によるアフリカ系米国人(黒人)射殺事件は、報復と見られる白人警官殺傷事件を引き起こし、人種対立の根深さを浮き彫りにした。今から半世紀以上前、米国では公民権運動の嵐が吹き荒れていたが、その当時との一番大きな違いは白人の「居場所」が狭くなっていることだ。グローバル化、社会の多様化で彼らの安心できる場所がどんどん少なくなっているのだ。米国社会はどう変容しているのか。関西大学の大津留(北川)智恵子教授(米国政治)に解説してもらった。

    相次ぐ事件、白人とアフリカ系の対立

    • 米テキサス州ダラスで銃撃犯に応戦する警官ら。この事件で警官5人が射殺された(AP)
      米テキサス州ダラスで銃撃犯に応戦する警官ら。この事件で警官5人が射殺された(AP)

     7月5日、米南部ルイジアナ州で「男に銃で脅された」との通報を受け、2人の白人警官が現場に急行した。警官はそこに1人でいたアフリカ系男性を2人がかりで押さえ込み、男性の胸をめがけて至近距離から発砲した。

     7月6日、今度はミネソタ州でアフリカ系男性の運転する車が白人警官に呼び止められた。男性は免許証を見せようとしたところを窓越しに撃たれた。

     助手席にいた友人の女性がその模様を動画で撮影しており、フェイスブックに投稿。「免許証を出そうとしただけだったのに」などと訴える女性と「動くなと言っただろ」と叫ぶ警官とのやりとりは、またたく間に拡散し、人々の怒りに火をつけた。

     警察に対する抗議デモが各地で繰り広げられる中、7月7日にはテキサス州で警官5人が射殺される事件が起きた。2件のアフリカ系射殺への報復と見られる。また、17日には、ルイジアナ州でも警官3人が射殺される事件が起きた。

     7月のアフリカ系射殺事件では、警官の過剰防衛が問題となった。社会の安全を守ることを職務とする警官は、常に危険と隣り合わせにある。社会に銃が蔓延(まんえん)している場合、その危険はさらに深刻となる。一連の事件だけでなく、近年、米国で立て続けに起きている警官による被疑者の殺害事件をめぐっては、日本とは異なる緊張関係の中で警官が職務を遂行していることを理解する必要がある。

     しかし、そうした事情をくんだとしても、白人警官がアフリカ系を殺害したという構図は動かない。一連の事件を受けて、私は「またしても」という気持ちを拭い去ることはできなかった。

    2016年08月09日 23時35分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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