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    仮想通貨ビットコインの意外なその後

    読売新聞専門委員 松井正
     未来の通貨として注目を集めながら、2年前に日本の取引所で大規模な通貨消失事件が起きたこともあって、ややうさん臭いイメージを持たれがちな仮想通貨ビットコイン。だが最近は、その裏側で動く「ブロックチェーン」と呼ばれる基幹技術に、熱い注目が集まる意外な展開となっている。5月の資金決済法改正で仮想通貨の支払い機能が正式に認められるなど理解も広がっており、ブロックチェーンはその応用範囲の広さや低コスト性から、国内の潜在市場規模67兆円とされる注目の技術に躍り出た形だ。

    「未来の通貨」と注目浴びるも、マウント・ゴックス事件で冷水

    • 未来の通貨として注目を集めたビットコインだが…(イメージ写真)
      未来の通貨として注目を集めたビットコインだが…(イメージ写真)

     ビットコインは2009年に、ネット上のエンジニアら有志によって開発された仮想通貨の一つだ。その仕組みや概念は、従来の通貨や電子マネーとは大きく異なる。

     円やドルなど各国の通貨は、政府や中央銀行など信用のある第三者が発行し、お札や硬貨などの形で流通する。クレジットカードやSuica(スイカ)などの電子マネーも、やはり運営企業の中央システムが、電子取り引きを厳格に管理しながら流通している。

     これに対し、ビットコインは中央のシステムを持たず、ネット上に公開された取り引き記録を複数のコンピューターが分散して共有し、相互に確認し合うことで「価値」の信頼性を保つ仕組みを持つため、改ざんが非常に困難なのが特徴だ。取引所で一般の通貨とも交換でき、海外送金の手数料も非常に安く、交換レートの変動が大きいため投機的な思惑も呼び込んで、一躍、注目を集めた。

     ところが14年、世界の取り引きの7割を当時占めていた東京・渋谷のビットコイン取引所「マウント・ゴックス」で、200億円以上の通貨消失事件が発生。当初はサイバー攻撃による盗難事件と思われ、ビットコインの信頼性に疑問符がついたが、後に取引所のデータ不正操作が発覚する。社長のマルク・カルプレス容疑者が業務上横領などの疑いで逮捕され、事件にビットコインの信頼性は無関係だった形だが、熱気は一気にしぼんだかに見えた。

    管理者不在でも驚異の「7年間ノンストップ」

    • 「ビットコインの通貨としての信任は揺るがなかった」と語る国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの高木聡一郎研究部長
      「ビットコインの通貨としての信任は揺るがなかった」と語る国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの高木聡一郎研究部長

     だが、その後もビットコインのシステムは、管理者がいないにもかかわらず順調に動き続けた。一時は日本から消えた取引所も5か所に増え、ビットコインが使える店やサービスは、今では1400店を数えるという。発行されるビットコインの時価総額は8月上旬現在で、世界で約90億ドル(約9000億円)と大きく増えている。

     国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの高木聡一郎研究部長は、「取引所の盗難騒ぎはあったが、結果的にビットコイン自体の信任は揺るがなかった。むしろ大量のサイバー攻撃を受けながら、7年間、一度も止まらず稼働し続けているシステムの堅牢(けんろう)性が、最近は高く評価され始めている」と説明する。

    2016年08月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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