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    経済

    伸びる会社(4) 家は買う前に品質を調べる

    読売新聞専門委員 東一眞

     住宅購入は、一生に1度か2度の大きな買い物なのに、建物の「品質」を調べないで購入する人が案外多い。今年5月、参院で可決・成立した改正宅地建物取引業法(宅建業法)は、中古住宅の売買にインスペクション(住宅診断)の活用を促す条項を初めて盛り込んだ。ようやく日本でも住宅診断が一般的になるかもしれない。実は、日本での住宅診断の草分けとして、業界を牽引し、市場を作り上げてきた小さな会社がある。株式会社「さくら事務所」である。

    会社を飛び出して自宅で設立したベンチャー

    • さくら事務所社長の大西倫加さん
      さくら事務所社長の大西倫加さん

     さくら事務所は、東京・渋谷区の住宅街の(しょう)(しゃ)なマンションの一室にある。普通の家のように靴を脱いでスリッパを履いて上がる。150平米のオフィス内は広々としている。インテリアなどは一般家庭のような、というか、どことなくメルヘンチックな雰囲気だ。

     「家族連れでマンション購入の相談に訪れる人もいますが、前に入居していた雑居ビルは事務所事務所していたので、もっと普通の家のような入りやすいオフィスにしたくて、ここに移ってきました」。さくら事務所の大西(おおにし)倫加(のりか)社長は笑顔で言った。

     住宅診断をメインの業務とする会社とは思えない優雅な雰囲気をたたえる会社なのだが、もちろんスタートからそうだったわけではない。

     創業のきっかけは、現・会長の長嶋修さんが、1990年代の終わり、広告業界から転職して、不動産関連会社に入り不動産の販売に携わったことだ。その時、不思議に感じたことがあった。何千万円のローンを組む大きな買い物なのに、人々は住宅の品質をほとんどチェックせずに買っていく。これでいいのだろうか?

    • マンションの内覧会に同行して施工状況を調べるサービスは現在も行っている)
      マンションの内覧会に同行して施工状況を調べるサービスは現在も行っている)

     建物の状況を診断して、その品質、問題点を買い主に伝える業務にはニーズがあると考えた。欧米では、不動産を売買する際に、買い主が診断士を雇って物件をチェックして、問題点があれば売り主に改修を求めたり価格を下げさせたりするのが一般的だからだ。長嶋さんは、勤めていた不動産関連会社で、このインスペクション事業の企画書を書いて上司に提案した。「日本で受け入れられるわけがない」と言われ、企画書を捨てられた。悔しくて、会社を飛び出した。「自分でやってみせてやる」と思い、99年3月に埼玉県越谷市の自宅で「さくら事務所」を始めた。

     最初はマンションの内覧会の同行からはじめた。新築マンションを契約した購入予定者とともに内覧会に行き、内装などを細かくチェックして、問題点があればゼネコンに補修を求める仕事だ。ただ、最初は依頼が少なく食べていけない状況だったという。住宅診断のサービス自体が、社会的に認知されていなかった。

     ホームインスペクション業を社会的に認知させたいと、相談に行った先のマーケティング会社で、長嶋さんの担当になったのが、現社長の大西さんだった。後に請われて、2004年にさくら事務所に入社した。

    2016年08月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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