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    自動車

    ベンツ、BMW…日本人がドイツ車にひかれるワケ

    モータージャーナリスト 御堀直嗣

     国内自動車メーカーの販売台数が伸び悩むなか、外国メーカー車の売れ行きは堅調だ。年間で500万台前後販売される国産車に比べると少ないものの、2016年の外国メーカー車の国内販売台数は、1997年以来となる30万台超えの可能性が見えている。とりわけ、2015年の輸入車販売台数で16年ぶりの首位となったメルセデス・ベンツや、16年上半期の販売台数が過去最高を記録したBMWなど、ドイツ車の人気が高い。自動車専門誌などのアンケート調査でも、ベンツやBMWは常に「乗ってみたい憧れの車」ランキングの上位を占める。なぜ、日本人はドイツ車にひかれるのか。モータージャーナリストの御堀直嗣氏が読み解く。

    「ドイツ車御三家」がシェア6割

    • ヤナセの東京支店芝浦ショウルーム(東京都港区)
      ヤナセの東京支店芝浦ショウルーム(東京都港区)

     日本自動車輸入組合(JAIA)の調べによると、15年度の外国メーカー別新車登録台数は、28万2079台余り。このうち、ドイツ車は70%近くを占める。ここには、ドイツの自動車メーカーが製造するミニ(英国)やベントレー(同)、ロールスロイス(同)などは含まれていない。

     外国メーカー別新車登録台数をシェア(占有率)でみてみると、1位はメルセデス・ベンツの22.77%。日本人の“ベンツ好き”が数字にも表れている。2位は、同じくドイツのフォルクスワーゲン(VW)で17.91%、3位がBMWの16.78%で、“ドイツ車御三家”が6割近くを占める。4位には、やはりドイツのアウディ(9.88%)が続き、5位のミニ(7.70%)もドイツ製だから、6位のスウェーデン・ボルボ(4.91%)でようやくドイツ以外のメーカーが登場することになる。

     VWは昨年、排ガス不正問題でシェアを大きく落としたものの、ドイツ車同士が1位を争う状況は長年続いている。米ゼネラルモーターズ(GM)や仏ルノーをはじめ、世界に有力メーカーが数あるなかで、我が国では、ドイツ車が“一人勝ち”の状態だ。なぜ、日本人はこれほどまでドイツ車を好むのだろうか。その理由を、三つの視点から考えてみる。

    信頼性に大きな影響及ぼしたヤナセ

     一つめは、輸入車販売を手掛ける「ヤナセ」の存在が、日本人のドイツ車志向に大きく影響を及ぼしたことだ。ヤナセの営業戦略は、実に日本人の消費行動を研究しつくした配慮に満ちている。

     ヤナセは、1915年に東京・日比谷で創業し、トラックやバスの車体製造からスタートした。4年後の19年に、米ゼネラルモーターズの「ビュイック」や「キャデラック」の輸入販売を始める。また22年、すべての部品をヤナセ自身で製作した純国産車「ヤナセ号」を完成させている。

     28年には、国内におけるメルセデス・ベンツのサービス工場の指定を受けている。ちなみに、1886年に世界初のガソリンエンジン自動車(三輪)を発明したカール・ベンツの会社と、同年に世界初の四輪自動車を発明したゴットリープ・ダイムラーの会社が合弁し、ダイムラー・ベンツ社となったのは1926年のことである。それからわずか2年後、ヤナセはメルセデス・ベンツのサービス工場指定を受けているのである。当時のヤナセの自動車整備技術がいかに()けていたかが分かる。

     戦後の52年、メルセデス・ベンツの輸入販売を開始したヤナセは、その2年後には、VWの販売も始める。ドイツの高級車であるメルセデス・ベンツと、庶民のクルマであるVWの販売を並行して進めたヤナセは、その品質管理に細心の注意を払ってきた。

     ドイツの自動車メーカーは、アウトバーン(速度無制限の高速道路)での走行を視野に入れているため、高性能の実現を開発の主眼に置いている。例えば、38年に生産が始まり、「ビートル(カブトムシ)」という愛称で長年人気を博したVWのあの姿は、アウトバーンを疾走する際の空気抵抗を減らし、走行安定性を確保するために生まれた流線形である。

     客席後ろにエンジンが搭載された訳は、当時のタイヤ性能が今日に比べはるかに低く、それでも高速走行する際にタイヤがしっかり路面を捉えて安定して走れるよう、駆動輪となる後輪にエンジンの荷重を与え、路面のグリップ力を高める目的があった。

     「性能第一」の設計思想が、ビートルのような庶民のためのクルマにも行き届いているのならば、高級車はなおさら高速走行できる性能と、その性能を維持するための保守管理が求められる。

     例えば、クルマのブレーキは数多くの部品で構成されているが、日本車では、ブレーキパッドの交換はしても、ブレーキディスクの交換まで行うことは、10万キロを超えるような走行をしたクルマでない限りはない。だが、超高速走行から確実に停止できるブレーキ性能が求められるドイツ車は、パッドの交換はもちろん、パッドを押し付けるディスクローターの交換も定期的に行われるのである。

    2016年08月25日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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