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    働く

    勘違いメンタルヘルスで部下の「心が折れる」時

    日本メンタルヘルス講師認定協会代表理事 見波利幸

    ■よくある誤解その3

    「結局、不調になるのは部下の心が弱いからで、自分ができることはない」

     部下のメンタルヘルスが不調に陥る要因として考えられるものは、職場の環境や、上司や同僚との関係などのほか、その人の性格もある。しかし、「この人は心が強い、弱い」などの決めつけた見方をしてしまうと有効な対処ができなくなってしまう。「見放す」行為では、部下は不信感を持ってしまう。

     確かに個人でストレスに対する力(ストレス耐性)は異なることが多い。同じストレッサー(ストレスの原因)でも、深刻に受け止めて心理的負担になる人もいれば、たいしたことがないと受け流す人もいる。

     しかし、ストレス耐性は生まれ備わったものではなく、学習によって高めようとすればいくらでも高められる。一番効果があるものは知識を養うこと。たとえば、ストレスから健康障害に結びつくメカニズムなどの知識を得ることで、自分がどう感じているか(認知)などの理解が深まり、完全な不調に陥ってしまう前のどの時点でどのような対処法をとることが自分に合っているかが理解できるようになる。

     これを個人任せにせず、余裕があれば上司がサポートできるといい。不調に気づくサイン(あいさつしない、遅刻・欠勤が増えるなど)やストレス対処方法の知識をセルフケア研修などで上司が得て、職場で負荷となっているストレス原因やその軽減方法などの会話を増やすことで、部下のストレス耐性も徐々に高まっていくだろう。

    • (写真はイメージです)
      (写真はイメージです)

     職場のメンタルヘルスで大切なことは、不調になる部下とならない部下を選別して、前者を見放すことではなく、仕事のできる部下を育てることだ。以上に挙げた誤解は一例でしかなく、これを一般化して職場の現状にあてはめることも危険だ。要は、部下が今悩んでいる状況を丁寧に分析し、対応していくこと。

     その過程で、そもそも本人が仕事をどのように捉えているか、を知ることも重要だ。やっている仕事の意味を感じない、やらされ感で仕事している、いつも指示されたものだけをやっている、特に目標はない、などと語るような部下の場合は、一番心が折れやすい。なぜなら、仕事の価値観が創造できていない状態だからだ。

     どのような仕事をしていきたいか、仕事でどのような役割を果たしたいか、どのような働き方が合っていると思うか、どのように成長したいか、など未来の視点に立脚した会話をすることで、部下のキャリア意識も少しずつ醸成されてくる。そして、部下が仕事のやりがいを感じ、自己肯定感を高められるような職場になれば、職場の士気もあがり、業績アップにも結び付いていくのではないだろうか。

     

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    プロフィル
    見波 利幸( みなみ・としゆき
     ITスキルや人材育成の研究を行うエディフィストラーニング(キヤノングループ)主席研究員として講演や研修のほか、カウンセリングや職場復帰支援、カウンセラー養成の実技指導などにあたっている。2015年より一般社団法人日本メンタルヘルス講師認定協会代表理事に就任し、講師育成を行う。「心が折れる職場」「劣化するシニア社員」「『新型うつ』な人々」(いずれも日本経済新聞出版社)など著書多数。

    • 『心が折れる職場』(日本経済新聞出版社)
      『心が折れる職場』(日本経済新聞出版社)


    2016年09月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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