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    生活

    “新築好き”日本で中古住宅取引は活性化するか?

    住宅ジャーナリスト 山本久美子
     住宅は「一生に一度の高い買い物」と言われるが、「どうせ買うなら新築を」と考える人も多いのではないだろうか。そんな日本人の新築志向もあって、欧米と比べて日本は中古住宅の取引が少なく、少子高齢化による空き家の増加にも拍車をかけている。こうした事態を受けて政府は、中古住宅取引の活性化対策に本腰を入れ始めた。一方で、消費者の間でも、中古住宅の間取りや内装を自分のライフスタイルに合わせて改修する「リノベーション」が注目され始めるなど、中古住宅に対する意識が変わりつつある。日本の住宅市場に変化は起きるのか。住宅ジャーナリストの山本久美子氏が解説する。

    「マイホーム=新築」のイメージ刷り込まれる

     「マイホームを買うなら、新築と中古のどちらを選びますか?」。こう聞かれたときに、「やっぱり新築かな」と答える人が多いのではないだろうか。

    • 高度経済成長期、人口急増に対応するため、東京郊外などに「ベッドタウン」が造成されたことなどから、日本人に「マイホーム=新築住宅」のイメージが定着(写真はイメージ)
      高度経済成長期、人口急増に対応するため、東京郊外などに「ベッドタウン」が造成されたことなどから、日本人に「マイホーム=新築住宅」のイメージが定着(写真はイメージ)

     新築住宅を選ぶ人が多いことは、内閣府の「住生活に関する世論調査」(2015年度)からもうかがえる。同調査によれば、住宅を購入するなら「新築住宅」を選ぶという回答が73.0%(新築一戸建て63.0%、新築マンション10.0%)に上り、「中古住宅」と答えた人はわずか9.9%(中古一戸建て6.1%、中古マンション3.8%)だった。

     こうした「新築至上主義」が生まれた背景には、日本の住宅政策がある。第2次大戦で焼け野原になった我が国では戦後、極度の住宅不足を解消するために、大量の新築住宅が供給された。高度経済成長期になると、東京に地方から大勢の働き手が集まり、彼らの住む場所を確保するために「ベッドタウン」を造成して、大量の新築住宅を用意した。そうした結果、多くの日本人に「マイホーム=新築住宅」というイメージが刷り込まれたといっていいだろう。

     ところが、多くの調査で「新築住宅を選ぶ理由」を聞いてみると、「すべてが新しくて気持ちいいから」「人が住んでいた後には住みたくないから」といったイメージ先行の理由が上位に挙がることがほとんどなのだ。

     一方、「中古住宅を選ぶ理由」では、「住みたい場所に住宅を購入するためには、中古住宅の方が手が届きやすいから」と価格面を理由に挙げることが多い。「マイホームは、なんとなく新築がいい。ただし、資金的に厳しいなら中古を選ぶかも」。それが大半の日本人の意識だとしたら、住まいの選択肢はなんと狭いことだろう。

    欧米は中古を買うのが当たり前

     日本は海外と比べても中古住宅の存在感がない。国土交通省の調べによると、中古住宅の流通シェアは、アメリカ(10年)が89.3%、イギリス(12年)が88.0%、フランス(13年)が68.4%なのに対し、日本(13年)は14.7%に過ぎない。

     欧米では、強固な建物を建てて、手を入れて住み継ぐことが基本だ。もちろん、伊勢神宮の「式年遷宮」に見られるように、日本では木造建築物を建て替えることで建築技術を代々継承する文化があり、地震などの災害が多いことなども含め、海外とは異なる事情もある。

     だが、アメリカ西海岸の都市ポートランドで現地の人に聞いた話では、アメリカ人の多くはむしろ、新築の方がリスクが大きいと考えるのだそうだ。新築は「建ったばかりで安全性や使い勝手がいいか分からない。植栽も成長していないなど、未確定要素が多い」というのがその理由。「成熟した街や建物の方が安心」という考え方もあるわけだ。

    2016年09月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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