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    国際

    中国人エリートに東大も一流企業も食い尽くされる!?(後編)

    ジャーナリスト 中島 恵
     観光や買い物だけでなく、日本で生活したいとまで考える中国人が増えている。その夢の実現のため、東大や京大といった難関大学に留学したり、日本企業に就職したりするケースも目立つという。経済発展が著しいなら、母国で生活した方が良いとも思えるが、彼らはなぜ、日本を目指すのだろうか。こうした中国人の取材を進めてきた中島さんが 前編 に続き、解説する。

    日本を目指す意外な理由

    • いつも混雑する上海のターミナル駅
      いつも混雑する上海のターミナル駅

     近年、「爆買い」に続き、中国人の「爆留学」と「爆就職」がじわじわと増えていることは前編で紹介した。日本で生活する中国人エリートが増えている背景には、彼らにとって日本が「すばらしい国」であることに加え、中国での進学難と就職難という“国内事情”がある。

     中国の人口は約13億7000万人と日本の10倍以上だ。国土は日本の25倍もある。この数字を聞いてもピンとこない日本人が多いだろうが、中国人の生活を一言で言い表せば、日本とは比べ物にならないくらい「超・超競争社会」ということだ。

     単に人口が多すぎるからというだけではない。経済発展の過程で、政府は公共投資などには資金を投入してきたが、市民生活に必要な投資をあまりしてこなかった。そのため、中国人が生活していく上で必要なよい資源は非常に限られている。そこに大勢の中国人が殺到してしまい、壮絶な奪い合いとなるのだ。

     よい資源とは、簡単にいえば、よい学校、よい病院、よい会社、よい施設のこと。人口の多さに比べて、誰もが行きたいと思うようなよい資源の数があまりにも少なすぎ、アンバランスであるために、深刻な進学難、就職難が起きている。

     もちろん、中国の進学難、就職難は今に始まったことではない。これまでも同様の状況は何十年もずっと続いていたのだが、中国が経済的に台頭し、中国人の生活が豊かになったことで、中間層以上の中国人の関心は海外へと向き、実際、海外に出ていくチャンスが増えた。国内にとどまって無理して限られた席を奪い合う必要はなくなり、海外に飛び出し、もっと幅広い選択肢の中で選ぶことができるようになったのだ。

     中国の受験戦争は過酷だ。中国の大学入試は毎年6月に丸2日間、全国一斉で行われる。日本の私立大学のように大学ごとに行われる試験はなく、一発勝負しかない。だからこそ、失敗は決して許されず、大学受験をする学生たちにとって最も緊張し、プレッシャーを感じる行事でもある。

     16年は中国全土で約940万人が大学を受験した。中国に約2800校ある大学のうち、政府が重点的に資金を投入する「重点大学」はわずかに80校のみ。その中でも、北京大学、清華大学、復旦大学といった超有名大学に通える学生はごく一握りだ。中国では卒業した大学名によって就職先が大きく左右されるだけでなく、給料も卒業大学によってランクづけされ、異なる。中国では「いい大学」に進学しなければ、その先の人生に明るい見通しはない。日本よりもずっと学歴社会なのだ。

    2016年10月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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