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    社会

    民間資金で社会問題解決!インパクト投資の衝撃度

    ソーシャル・ファイナンス研究会代表 小林立明
     「インパクト投資」と呼ばれる投資手法が注目を集めている。貧困や環境など社会問題の解決のために民間資金を投資し、同時に経済的利益を追求する、新しい投資スタイルだ。最近では、社会問題の解決に取り組んでいる企業に投資する投資ファンドを購入することで、個人でも実質的にインパクト投資に参加できるようになっている。海外ではインパクト投資のマーケットが着実に発展しつつあるものの、日本ではまだその途上にある。インパクト投資の現状と普及への課題などについて、ソーシャル・ファイナンス研究会代表の小林立明氏が解説する。

    フェイスブック創設者がアフリカ支援に投資

    • 夫人とともに有限責任会社を設立してインパクト投資を行っているマーク・ザッカーバーグ氏
      夫人とともに有限責任会社を設立してインパクト投資を行っているマーク・ザッカーバーグ氏

     世界最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)・フェイスブック。その創設者であるマーク・ザッカーバーグ氏は昨年12月、チャン夫人とともに有限責任会社「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」を設立し、保有するフェイスブック株の99%(当時の時価総額で450億ドル=5兆5300億円)を社会貢献活動に使うと発表した。

     通常、彼らのような大富豪が社会貢献活動を行う場合、財団を設立して寄付・助成を行うことが一般的である。例えば、同じIT業界の大富豪、ビル・ゲイツ氏は、夫妻の名を冠した財団を設立し、途上国への開発協力や感染症対策など様々な慈善事業に取り組んでいる。

     しかし、ザッカーバーグ夫妻が選択したのは、従来型の「寄付」ではなく、「インパクト投資」だった。夫妻は、財団ではなく、投資を目的とした有限責任会社を新たに設立し、第1号案件として、起業したばかりのアフリカのIT企業「Andela」に2400万ドルを投資したのである。

     最近、日本でも「インパクト投資」という言葉を聞くようになった。テレビ番組で特集が組まれ、厚生労働省が、官民連携によるインパクト投資の手法である「ソーシャル・インパクト・ボンド(社会的インパクト債)」のモデル事業を来年度の概算要求に計上したことも報じられている。

     「インパクト投資」とは、「経済的リターン」だけでなく「社会的リターン」、つまり社会的課題の解決や社会貢献の達成をも同時に目指す投資を指す。2007年、米国ロックフェラー財団が開催した国際会議で初めて提案され、その後、急速に発展した新たな投資手法である。

     ザッカーバーグ夫妻のインパクト投資に話を戻そう。なぜ、ソフトウェア開発を行うIT企業「Andela」への投資が社会貢献活動になるのだろうか。通常、開発途上国での雇用・人材育成と言えば、国際協力機関や財団による奨学金給付や雇用訓練が定番である。しかし、Andelaは、ビジネスの手法で雇用・人材育成の実現を目指している。実際、Andelaは、アフリカ全土から優秀な人材をリクルートし、採用後は、社員が高等教育を受けることを積極的に支援している。

     Andelaのビジネスモデル自体に、収益を通じた雇用確保と人材育成という社会貢献が組み込まれているのである。だからこそ、ザッカーバーグ夫妻のAndelaへの投資は、経済的リターンと社会的リターンの双方の実現を目指す「インパクト投資」となるのだ。

    2016年10月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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