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    国際

    追い込まれたトランプ氏、一発逆転の秘策はあるか

    選挙プランナー 三浦博史
     11月8日に投票が行われる米大統領選は、いよいよ勝負所を迎えた。民主党のヒラリー・クリントン、共和党のドナルド・トランプ両候補が直接対決するテレビ討論会は、10月9日(日本時間10月10日)に2回目が予定されている。1回目はクリントン氏に軍配が上がったとする声が多いが、果たしてトランプ氏に一発逆転の秘策はあるのか。日米両国の選挙を知り尽くした選挙プランナーの三浦博史さんに寄稿してもらった。

    トランプ氏のオウンゴール

     9月26日に行われた1回目のテレビ討論会の視聴者数は8400万人にも達し、36年ぶりに最高記録を更新した。今回の大統領選への米国有権者の関心は非常に高い。

     真っ赤なスーツを着て颯爽(さっそう)と登場し、ハツラツとした表情を浮かべたクリントン氏。受け答えも落ち着いていた。これに対しトランプ氏は、鼻をズルズルすすり、クリントン氏の発言中に何度も口を挟み、話を遮ろうとしていた。これでは、視聴者のクリントン氏に対する好感度は上がり、トランプ氏への嫌悪感は増すばかりだ。

     第1回の勝敗については、民主党を支持する映画監督マイケル・ムーア氏が「我々(クリントン陣営)は負けた」とツイッター上でつぶやいていたが、これは少数派。私は陣営を引き締めるための発言だったのではないかと解釈している。

     CNNといった主要なメディアも含め、米国内では「クリントン氏圧勝」の声が多数派だ。クリントン氏が評価されたというよりも、明らかに準備不足だったトランプ氏のオウンゴールが災いしたものと言っていいだろう。

     クリントン氏優位の流れは、両氏が大統領候補に正式指名された党大会の時から続いていた。7月にペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれた民主党大会では、クリントン氏と最後まで指名を争ったバーニー・サンダース上院議員をはじめ、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長やオバマ大統領、バイデン副大統領ら党有力者が顔をそろえ、結束を印象づけた。

     一方、オハイオ州クリーブランドで開かれた共和党大会は、ブッシュ前元両大統領やジョン・マケイン上院議員、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事といった党の重鎮をはじめ、大会ホスト役のジョン・ケーシック・オハイオ州知事までがそろって欠席した。さらに、トランプ夫人が行った演説が盗作と指摘されるなど、その後の波乱の展開を予測させるものとなった。

    決定打に欠けるクリントン氏

     ここまで戦いを優勢に進めているように見えるクリントン氏だが、いくつか大きな問題を抱えている。その一つは「メール問題」。国務長官在任中に私用のメールアカウントで機密情報をやり取りしていたとされる問題だ。先の討論会ではトランプ氏の追及に対し「私は間違いを犯した。言い訳はしない。責任は取ります」と潔い答えでうまくかわした。

     もう一つは「健康問題」だ。今年の同時多発テロの追悼式典に出席した際は、肺炎のため早めに退席、車の中に倒れ込んだ。衆人の前でこのような姿を見せてしまったことで、大統領としての激務をこなせるのか、民主党内からも不安がわき起こっている。

     クリントン氏の周辺では、中国の実業家からの寄付金が選挙資金に流れ込んだのではないかという疑惑があるほか、新たなスキャンダルが炸裂(さくれつ)するとのうわさもくすぶっている。

     「史上初の黒人大統領」の次は「史上初の女性大統領」を期待する声も多い一方で、クリントン氏の「上から目線」的言動を嫌う声は根強い。相手がオウンゴールしたのに、クリントン氏はまだ決定打を放つことができていないのだ。

    2016年10月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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