Google「世界中に無料Wi-Fi」で狙うアレ
人工知能で主導権を取りたいGoogle
ピチャイCEOも「ユーザー一人一人に適したGoogleを提供していきたい」と人工知能の重要性を強調している。例えば16年10月に発表した同社のスマホ「Pixel」には「Google Assistant」を搭載しており、話しかけることで天気や交通情報、レストランなどの検索ができる。また同年6月には、人工知能を活用した小型スピーカー型の「Google Home」を発表した。自宅の居間などに置いて話しかけると、天気や交通情報、スケジュールの確認、おすすめのレストランなどの知りたいことを教えてくれるサービスだ。
このように、Googleは人工知能の分野で世界的な主導権を取ろうとしている。しかし、人工知能のサービスはGoogleだけでなくFacebookやAmazonも提供しようとしている。
特にAmazonは「Google Home」の競合製品である「Amazon Echo」という人工知能を搭載したスピーカーを15年から提供しており、Googleを一歩リードしている。話しかけるだけで買い物ができたり、音楽聴き放題サービスを提供したりといった機能を持つ。「一家に2台も人工知能搭載スピーカーはいらない」という家庭が多いだろうから、Googleはこの分野では先を行くAmazonを追う立場だ。
また、全世界で17億人以上の利用者がいるFacebookも、人工知能に注力している。Facebookも、Googleと同様に広告収入に依拠している。そのため、ネットにアクセスしてFacebookを利用してもらわないと収入増に繋がらない。
同社は「Internet.org」プロジェクトを通じて新興国で積極的にインフラ整備や無料でのネットアクセスのサービスを進めようとしている。Facebookも決して慈善事業で新興国にインフラを提供して、無料のネットアクセスを普及させようとしているのではなく、そのゴールは広告収入の増加と人工知能強化のためのデータ収集だ。
人工知能で協力するアメリカIT企業とこれからの課題
このように、アメリカを代表するネット企業各社が人工知能に注力しており、それぞれがライバル同士だ。
だが、16年9月にはGoogleと傘下の「DeepMind」、Facebook、Amazon、Microsoft、IBMといったアメリカを代表するIT企業が人工知能の普及を目指す非営利団体「Partnership on Artificial Intelligence to Benefit People and Society(略称:Partnership on AI)」を設立した。
人工知能の未来は明るいだけではない。人工知能の急速な発展に懸念を示す人々も多い。特に人工知能の普及によって新たなサービスが登場する一方で、それによって仕事を奪われることを懸念する人々は世界中に多い。
また、想像以上に進化のスピードが速く、人工知能が人間にとって脅威になるのではないかと、英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士なども警告している。
これらの懸念に応えるため、ライバルである彼らは、あえて手を組むことを選択した。団体の目的は「人工知能がいかに人類に貢献し、安全であるかを世界中に発信していくこと」と「人工知能のベストプラクティスを共有していくこと」だ。今後も多くの企業や研究機関に参加を呼び掛けていく。
たとえば、先述のDeepMindは、人間が人工知能を制御できなくなりそうな時に人工知能を止めるための「非常ボタン」も開発しているそうだ。今後はこういった人工知能の暴走なども視野に入れた協力も求められるだろう。このような取り組みは、1社だけでは難しい。Partnership on AIをはじめ、人工知能に関わる世界中の全ての関係者で対応すべき問題なのだ。
世界規模での人工知能の発展とサービスの進化を止めることはできない。人工知能の発展のためには世界中のあらゆる所から多くの情報やデータの収集が必要であり、そのためにGoogleなどはインフラ整備も行って、誰もが簡単にネットにアクセスできる環境を整備しようとしている。
世界には、まだネットにアクセスできない人が約40億人いる。まだ新興国でのインフラ整備の拡大の余地は大きい。これからもGoogleやFacebookなどアメリカのIT企業による無料Wi-Fiやネットワークのインフラ整備は拡大していくだろう。それは、おそらく新興国だけにとどまらない。彼らは世界中からあらゆる情報やデータを収集して、人工知能を強化し、更なる事業の拡大を目指そうとしているのだ。
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