文字サイズ
    国際

    現代の科挙――なぜ中国の受験戦争は過酷なのか?(前編)

    ジャーナリスト 中島恵
     「受験戦争」という言葉があるように、日本でも大学受験は大変だが、お隣の中国ではそれに輪をかけて苛烈な大学受験が若者たちを苦しめている。大学に合格しなければ、明るい未来は開けないからだそうだ。なぜ中国はそれほどまでに学歴主義なのか。現代によみがえる「科挙」の仕組みと矛盾をジャーナリストの中島恵さんに読み解いてもらった。

    「もう二度と思い出したくない」

    • 中国の大学入試に臨む若者たち(写真提供:新華社)
      中国の大学入試に臨む若者たち(写真提供:新華社)

     「科挙」という中国由来の言葉を知っている日本人は多いだろう。隋(587年)の時代に始まり、清朝まで約1400年間も続いた中国の官吏登用試験のことだ(最後に科挙が行われたのは1904年)。数十万、数百万人という受験者の中から、国家を動かしていく“超エリート”のお役人を選抜するピラミッド型の超難関試験で、その伝統は韓国などにも伝わり、中国や韓国の時代劇ドラマにもよく描かれている(幸か不幸か、日本には伝来しなかった)。

     今ではもう科挙制度は存在しないが、中国のあまりにも過酷な受験戦争は「現代の科挙」と形容され、中国の若者たちを苦しめている。昨今、中国人留学生が日本や欧米に殺到していることは、以前こちらの記事で紹介した。その背景には、彼らが苦悩する国内の受験事情が隠されている。

     「大学受験のときのことですか? 正直いって、もう二度と思い出したくないですね。はっきりいって、忘れてしまいたいほどうんざりする思い出なんです」

     30歳を過ぎた上海在住の中国人ビジネスマンと話していたとき、彼はそう言って顔をしかめた。彼は裕福な家庭で育ち、家庭教師をつけてもらって勉強し、北京の中国伝媒大学(アナウンサー、新聞記者などメディア関係者を多く輩出している名門大学)を卒業した。そんな恵まれた環境で育った彼でさえ、中国の受験には良い思い出がない。

     現在、東京都内の大学病院で看護師として働く女性の場合は、河南省の出身。家が貧しかったために都会にある有名大学に行く道をあきらめ、地元の看護大学に進学した。しかし、成績優秀者には奨学金が出るため、毎晩、寮の消灯後は廊下の明りを頼りに立ちっぱなしで深夜3時まで勉強した、と思い出を語ってくれた。

    2016年10月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP

    今月の特集「みんなにHappy Christmas!!」

    幾つになっても楽しいクリスマス