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    国際

    暴言も計算ずく? ドゥテルテ大統領の意外な素顔

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利を収めたことで、改めてこの人に注目が集まっている。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領だ。トランプ氏の勝利を喜んだかと思えば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平国家主席にすり寄る姿勢を隠さない。予測の難しい言動を繰り返しているが、フィピリン国内では「実はしたたかな戦略家」との見方もある。一体、どれが本当の顔なのか。住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに寄稿してもらった。

    トランプ氏への祝辞と「英雄」プーチン氏との会談

    • ロシアのプーチン大統領(右)と会談するドゥテルテ大統領(AP)
      ロシアのプーチン大統領(右)と会談するドゥテルテ大統領(AP)

     「トランプ『大統領』におめでとうと言いたい。我々はささいなことにも暴言を吐いてきた。似たもの同士だ。だが、もう(米国との)けんかはやめる。トランプ氏が勝ったからだ」

     ドゥテルテ氏は11月9日、訪問先のマレーシアでトランプ氏の勝利を祝福した。かつてはオバマ大統領に厳しい言葉を投げつけ、米国とフィリピンの二国間関係に緊張を招いていたが、そうした言動がトランプ政権の発足とともに変化する可能性があることを示唆した。

     それから10日余りが過ぎた20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたペルーの首都リマで、ドゥテルテ氏は「英雄」と(たた)えるプーチン大統領との会談を実現した。

     その席でドゥテルテ氏は、一転して米国への不満をぶちまけた。「最近、多くの西側の国々が小国をいじめている。おまけに多くの偽善的な行いにも手を染めている」と述べ、米国と西欧諸国を厳しく批判した。

     リマでは習近平国家主席とも会談。「中国とは永遠の兄弟のような関係を築きたい」と述べ、南シナ海問題で対立していた中国との関係改善に改めて意欲を示した。

     ドゥテルテ氏はリマに出発する前には「中露が新たな秩序を作るなら、真っ先に加わる」と述べるなどかねてより中露への接近を示唆していた。したがって、中露首脳への呼びかけは想定の範囲内といえる。しかし、そうした方針を維持しつつも、トランプ政権が発足すれば、米国との関係に一定の軌道修正を図る可能性もある。

     こうしたドゥテルテ氏の外交をみていると、自らの気分に従って自由奔放に振る舞っているようであり、その予測は困難とも思える。しかし、実は、フィリピン国内では単なる無軌道な気分屋とは異なるイメージで見られている。

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    2016年11月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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