文字サイズ
    IT

    受験生必読! 「東ロボくん」に学ぶ成績向上のワザ

    読売新聞調査研究本部主任研究員 芝田裕一

    計算ミスなし、暗記力完璧だが問題も…

     東ロボくんはコンピューターだから計算ミスはしないし、暗記力は完璧だ。数学と世界史は得意科目である。今年のセンター模試も、ほとんどの科目で現役高校生の全国平均を上回っている。なるほど、特別な苦手科目はないように見える。

     「苦手なのは特定の『科目』でなく、特定の『問題』です。意味を深く考えなければいけない問題が苦手なのです」。新井教授は、東ロボくんの学力について、そう分析している。

     東ロボくんは、「問題文の意味」を理解して解いているのではない。問題文中の言葉のパターンを見て、統計学的に妥当であると推定される答えを返しているだけである。したがって、文章や会話全体の意味を理解しないと解けない問題には答えられない。2011年にアメリカのクイズ番組で人間の王者を負かしたIBMのワトソンも同様であり、これが東ロボくんプロジェクトを通じてわかってきた人工知能の弱点でもある。

     人工知能に見いだされた弱点――それは、生身の人間には関係のない話と言えるのだろうか? 新井教授は、プロジェクトを進めるうちに気になり始めたことがあった。

     たとえば、国語の文章題だ。東ロボくんは、選択肢にある単語が本文とどのくらい一致するかどうかなどを見るが、本文の意味は全く理解していない。ところが、東ロボくんの模試の成績は、現役の受験生を押しのけて上位に入っている。意味を理解しているはずの人間が、意味を理解していない人工知能に負けるのは変ではないだろうか?

     「センター模試では、受験者の8割が東ロボくんより点が悪かった。それは、計算力や暗記力の差のせいではなく、高校生も問題文が読めていないからではないか。問題の意味を正しくつかんでいないのではないか」。試験会場で問題文を読み、その意味をきちんと正確に把握する力は、人工知能だけでなく、現役の受験生にも欠けているおそれがある――新井教授はそんな懸念を抱くようになったのだ。

     新井教授の懸念は、ある調査の実施につながる。NIIは昨年と今年、全国の中高生を対象に、教科書や試験に出る問題文の日本語を理解しているかを確かめるテストを行った。

     対象は、教科書に掲載されている文章だ。新井教授自身は「ほとんどミスはないだろう」と予想していたが、結果は正反対だった。

     中学生の2割は、文章の主語と目的語が何かという読解ができておらず、5割は内容を読み取れていなかった。多くの中学生が、どの言葉がどの言葉にかかるのかが理解できていなかったのだ。高校生も、設問によっては、4割が意味を理解できていなかった。中高生の読解力不足は予想以上に著しかった。

     新井教授は、人工知能によって変化する労働市場に追いつくための教育、人工知能にできない人間の能力を伸ばす教育を実現したいと考えていた。「文章の意味を読解する」という課題は、人工知能にはできない人間の得意分野の一つのはずだった。「ここで差別化しないといけないのに、人工知能が苦手な問題を人間も苦手だったなんて……」。事態の深刻さにがくぜんとしたという。

     「正直言って、東ロボくんの学力を上げることよりも、中学生の読解力を上げることが、喫緊の課題ではないかという気持ちに至りました」

     新井教授の嘆きの裏には、現役の受験生にとって重要なアドバイスが隠されている。すなわち、「教科書を正確に読む」「問題文を的確に読み込む」――そうした地道な努力と訓練を積み重ねることで、現実に数多くの中高生が苦手とする弱点を克服し、成績をアップさせることが可能になるというヒントである。

    【あわせて読みたい】

    人工知能が読み解くあなたの「感性」

    【ママ朗報】子どもは「手づかみ食べ」でいいんです

    増える子どもの転落事故…背景に「高所平気症」?

    2016年12月19日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP

    目力アップ♪

    疲れをほぐして、イキイキと!