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    受験生必読! 「東ロボくん」に学ぶ成績向上のワザ

    読売新聞調査研究本部主任研究員 芝田裕一

    東大めざし4年目、センター模試挑戦は今回限り

    • デンソーが試作したロボットアーム「東ロボ手くん」
      デンソーが試作したロボットアーム「東ロボ手くん」

     有名私大の合格圏入りを確かなものにしながら、センター模試への挑戦は今回限りと発表された東ロボくんの「進路」はどうなるのだろう? 最終目標は東大合格ではなかったのか。

     新井教授の説明はこうだ。「プロジェクトの名称は『東大に入れるか』です。『か』がついているところがとても重要なポイントです。東大に合格する人工知能の開発が目的ではなく、東大入試への挑戦を通じ、人工知能に何ができて、何ができ

    ないかを知ることが目的だったのです」

     「東ロボくんが東大を目指して4年目。高校生にたとえると既卒(浪人)1年目ということで、さらに浪人して東大を目指すのか、新たな進路を選ぶのかという非常に重要な時期だと思います」。東ロボくんの模試参加を認めたベネッセの小林一木アセスメント開発部室長もそう語っている。

     進路変更には、別の側面もある。来年以降、東大合格圏まで点数を上積みするには、学習するデータの量を大幅に増やさなければならない。今後は、学力向上の費用対効果が悪くなるとの見通しもあったのだ。

     東ロボくんプロジェクトには、100人を超える研究者・大学院生が参加している。東大合格よりももっと重要なことに人材と予算を使いたい。それが、新井教授が東ロボくんの進路変更を決断したいちばんの理由のようだ。

     今後は、「新東ロボプロジェクト」の柱の一つとして、中高生の読解力を高める教材の開発を目指したいという。プロジェクトに協力した企業は、それぞれが担当したソフトの産業応用を目指していく。

     しかし、NIIのプロジェクト概要説明には「2021年度の東京大学入試を突破することが目標」とはっきり書いてある。もう少し浪人して頑張ってもよかったのに、という思いも残る。

     ただ、東ロボくんの受験勉強は今後も続く。センター試験模試は受けないが、得意な「数学」と「世界史」については、東大2次試験の模試挑戦は継続するという。「体がないのにロボットなのか」と嫌みを言われることもあった東ロボくんは、論述式問題の解答を代筆するロボットアーム「東ロボ手くん」をデンソーが試作し、ほんの少しロボットらしくなった。ホンダが開発したアシモのような2足歩行ロボットに搭載すれば、いつの日か東大の赤門まで電車で行ってホンモノの受験を体験することができるかもしれない。それもまた、夢のある物語ではないだろうか。

    「10~20年後、労働人口の半分が代替可能に」

     さて、大学受験へ挑戦するまでに「進化」した人工知能は今後、私たちの社会をどのように変えるのだろうか?

     野村総合研究所と英オックスフォード大学は2015年12月、「10~20年後、日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になる」とする試算を発表した。

     「コンピュータが仕事を奪う」という著書のある新井教授の見立ても同様だ。2025年から30年にかけて、ホワイトカラーの仕事の半分は機械にとってかわられる可能性がある――との予想を示している。「もし人工知能がMARCHクラスに合格したら、その恐れは現実のものになると感じていたのです」と新井教授は語る。今回の東ロボくんの成績表からは、労働市場の変革は間近に迫っていると言わざるを得ないだろう。

     人工知能が変えうるものは、私たちの働き方ばかりではない。

     筆者が新井教授から東ロボくんの話を初めて詳しく聞いたのは13年の4月のことだ。プロジェクトを始めたきっかけの一つは、日本の大学入試制度が、人工知能にとって「ブルーオーシャン」(青い海=競争のない未開拓市場)になるからだという解説が印象に残っている。

     一方、インターネットの検索エンジンや機械翻訳用の人工知能の開発のように、グーグルなど世界の大企業が参入している競争の激しい市場は「レッドオーシャン」と呼ばれる。欧州経営大学院のレネ・モボルニュ教授らは、企業の基本的な経営戦略の方向として、「レッドオーシャンに参入するよりもブルーオーシャンを切り開くべきだ」と説いている。

     人工知能は、労働市場の変革だけでなく、新しい大きな市場の創出にもつながる可能性がある。東ロボくんと、彼に続く人工知能の「後輩たち」の新たな挑戦からますます目が離せない。

    プロフィル
    芝田 裕一( しばた・ゆういち
     読売新聞調査研究本部主任研究員。専門分野は科学、テクノロジー。ロンドン特派員、科学部次長を経て現職。地震災害対策や先端医療、ものづくりの技術など、科学技術分野の幅広いテーマに関心がある。「読売テクノ・フォーラム」と「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」を担当している。

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    2016年12月19日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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