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    国際

    映画から読み解く「メキシコ国境の壁」

    国立民族学博物館准教授 鈴木紀
     トランプ次期米大統領は選挙中から、メキシコ国境に壁を築き、その費用をメキシコに支払わせると宣言している。米国人の仕事、賃金、安全を最優先するためだ。移民を制限して米国人の雇用を確保するという主張はわかりやすいが、この政策が実行されれば、それが引き起こす影響は甚大だ。移民や国境、家族などをテーマに名もなき人たちを主人公にした映画を上映してきた国立民族学博物館の鈴木紀准教授に、メキシコ側から見た「国境」の意味について、いくつかの映画を題材に読み解いてもらった。

    AngelesとAngelsの違いが意味するもの

    • 米国とメキシコの国境はまさに歴史の舞台(画像はイメージ)
      米国とメキシコの国境はまさに歴史の舞台(画像はイメージ)

     米大リーグの球団ロサンゼルス・エンジェルスはLos Angeles Angelsと書く。天使(Angel)という言葉が2度出てくるが、語尾はesとsだ。

    なぜだろうか。

     それは前者がスペイン語の地名、後者が英語の球団名で、両言語で複数形の形が異なるからだ。ロサンゼルスをはじめ、米国南西部にはスペイン語の地名が多い。たとえばラスベガスは「星々」、サンフランシスコは「聖フランシス」という意味のスペイン語だ。これは、この一帯が16世紀以降スペイン人によって植民され、1821年にメキシコがスペインから独立して以降、メキシコ領だったからだ。

     19世紀前半まで、米国とメキシコの国境は現在よりもずいぶん北にあった。ところが現在のテキサス州一帯のメキシコ領にアメリカから入植した移民たちが独立戦争を起こし、その土地は1845年に米国に併合された。さらに米国はメキシコに派兵して戦争をしかけ、1848年に現在のカリフォルニア州など広大な土地をメキシコから割譲させた。そして1853年のガズデン条約によって国境地帯のメキシコ領を購入した。

    つまり、米国は移民と武力、金の力でメキシコ国境を現在の位置まで押し下げることに成功したのだ。

     メキシコ人にとって米国南西部は、いわば先祖の故郷だ。無許可で訪問すると不法と言われるようになったのは、このような19世紀における米国の拡張主義が原因である。

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    2017年01月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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