文字サイズ
    文化

    祝・芥川賞 山下澄人「しんせかい」を読み解く

    読売新聞調査研究本部主任研究員 渡辺覚
     第156回芥川賞(2016年下半期、日本文学振興会主催)は、山下澄人さんの「しんせかい」(初出・「新潮」7月号)に決まった。ベストセラーとなった村田沙耶香さんの「コンビニ人間」や又吉直樹さんの「火花」などの芥川賞受賞作に続く山下さんの作品は、どこがスゴイのか? 受賞作「しんせかい」の読みどころや、受賞者と選考をめぐる隠れた話題などについて、読売新聞調査研究本部の渡辺覚主任研究員が紹介する。

    50歳にしての「高齢受賞」

    • 芥川賞に決まった山下澄人さん
      芥川賞に決まった山下澄人さん

     「芥川賞、すごいなぁと。ちょっとびっくりしています。それと、ちょっとホッとしているのと……。まぁ以上です」

     19日午後8時過ぎ、東京都千代田区の帝国ホテルで行われた受賞者記者会見の冒頭、「今の心境」を尋ねられた山下澄人さん(50)は、会場に詰めかけた報道陣に苦笑いしながら喜びを語った。

     黒いライダースジャケットを着て、1メートル83センチの長身を窮屈そうに折り曲げながら、とつとつと語る。会見を通じて山下さんは、何度となく「ホッとした……」と繰り返していた。過去に3回芥川賞の候補となり、4回目の挑戦で賞を射止めた安堵(あんど)の思いがにじむ言葉だった。

     芥川賞と直木賞は1935年に制定され、日本で最も知名度の高い文学賞だ。ともに毎年2回選考が行われ、芥川賞は雑誌に発表された純文学の中・短編作品が対象で、一方の直木賞はエンターテインメント作品(賞制定時の表現は「大衆文芸」)の単行本を対象にしている。

     日本文学振興会が定めた賞の規定では、作品のジャンルだけでなく、書き手についても条件が明記されている。このうち芥川賞に関しては、「無名()しくは新進作家の創作中最も優秀なるものに呈す」とあり、近年では20代、30代の若い受賞者が大半を占めている。

     このため、今回の芥川賞に決まった山下さんのような「50歳の受賞者」は、飛び抜けて「高齢」の部類に入る。第148回(2012年下半期)は、75歳の黒田夏子さんが受賞して大きなニュースとなったが、このケースを除けば、50歳代の受賞者は第102回(1989年下半期)の瀧澤美恵子さん(50歳=受賞当時)から、四半世紀以上にわたって例がなかった。その意味では、「僕が芥川賞作家ですよ。うそやろって感じ」と山下さんが記者会見で発した言葉も、うなずける一面がある。

    2017年01月20日 19時56分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP

    目力アップ♪

    疲れをほぐして、イキイキと!