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    トヨタが独VWに「世界一」の座を奪われたワケ

    モータージャーナリスト 御堀直嗣

    「負のイメージ」にあまりとらわれない欧米の消費者

     とは言え、排出ガスの不正問題は、企業の信頼を大きく損ねる失態であり、顧客離れが起きてもおかしくない。実際、15年9月にVWの不祥事が発覚すると、日本では翌10月にVWの販売台数が一気に半減した。そして、国内輸入車販売台数で15年間守ってきた首位の座を、同じドイツ勢のメルセデス・ベンツに譲ったのである。

    • フォルクスワーゲンが中国市場向けに投入したセダン「フィデオン」(2016年2月29日)
      フォルクスワーゲンが中国市場向けに投入したセダン「フィデオン」(2016年2月29日)

     メーカーに不信感を抱き、購入を控える消費者心理はよくわかる。だが一方で、それまでのVWに大きな汚点はなかったし、同社のモノづくりへの信頼は厚かったはずだ。しかも、問題となったディーゼルエンジン車は日本では販売されておらず、ガソリンエンジン車には何の不具合もなかった。ディーゼルエンジン車にしても、最新仕様の新車については何ら問題ないと、VWは主張している。

     メーカーへの信頼という精神的な支えはもちろん、おろそかにできない。だが、今、目の前で売られている新車に不具合がないのであれば、買って損はないであろう。そのことを、海外の消費者は理解しているのではないか。事実、不祥事の震源地となったアメリカで、VWは16年の販売台数を前年よりわずか0.8%ながら増やしているのだ。

     ヨーロッパにおいても、VWはドイツ、イギリス、フランスなどで販売台数を伸ばしている。つまり、欧米の消費者は、不祥事の「負のイメージ」にあまりとらわれずに、己の目で判断し、良いと思ったモノを買っているということだ。中国人もまた、欧米人と同じような思考で買っているのだろう。結果として中国は、VWが16年に最も販売数を伸ばした市場となった。

    電動化の道に転換し競争

     VWは、今回の不祥事をきっかけにして、一気に電動化の道へ転換しようとしている。同社は、20年までに20種類以上に及ぶ新型の電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を市場投入すると表明した。ディーゼルエンジンから電動化への転換は、アメリカ市場でのラインアップの充実も意味する。一方のトヨタは、昨年12月、トヨタグループの豊田自動織機、アイシン精機、デンソーからの人材を加えて、EV開発のための社内ベンチャーを設立している。

     トヨタとVWは今後、電動化を軸に、世界一の座を巡って熾烈(しれつ)な競争を続けていくことになるだろう。EVの開発でカギを握るのは、リチウムイオンバッテリーの信頼性・耐久性の向上と、大量生産による原価低減である。これは、自社グループだけで対応するのは難しい。そこで、内製部品に固執せず、他社の部品を組み合わせて使っても独自性のあるクルマを生み出せるかどうか。トヨタに限らず、日本の自動車メーカーのモノづくりが問われることになるかもしれない。

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    プロフィル
    御堀 直嗣( みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。
    2017年01月24日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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