文字サイズ
    国際

    キーワードで読み解く トランプ就任演説

    読売新聞調査研究本部主任研究員 岡本道郎
     1月20日、ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。世界が注目した就任演説でトランプ大統領は、グローバル化で疲弊しきった米国の惨状にピリオドを打ち、「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)であらゆる政策を実行すると宣言した。米国が世界秩序の維持に関与してきた戦後70年の歴史と決別し、なりふり構わぬ自国第一主義を前面に打ち出した前代未聞の就任演説を、読売新聞のアメリカ総局長、国際部長を務めた岡本道郎・調査研究本部主任研究員が、英語の原文を踏まえて<キーワード>とともに読み解く(演説全文の和訳は こちら )。

    連呼された「アメリカ・ファースト」

    • 米大統領就任式に臨むトランプ新大統領(栗原怜里撮影)
      米大統領就任式に臨むトランプ新大統領(栗原怜里撮影)

     ■From this day forward, it’s going to be only America First. America First.
     (今日この日から、ひたすら米国第一に徹する。米国第一だ)

     歴代の米国大統領が行ってきた就任演説の中でも短い約16分、1433語の演説のちょうど半ばで、トランプ氏が連呼した「アメリカ・ファースト」。この瞬間、世界は超大国アメリカのまぎれもない政策転換を知った。演説を通して世界の人々は、自分たちがもはや「トランプ劇場」を一喜一憂しながら見物するだけの観客ではなく、扇動的な実業家が超大国の合衆国大統領として君臨するリアルな「トランプ世界」に生きる当事者であるという現実を認識したことだろう。

     演説でトランプ新大統領は強調した。米国は負け続けている。雇用を世界に奪われている。私なら「アメリカ・ファースト」で勝ち続ける。そして米国を再び偉大にする――と。歴代の米大統領はこれまで、選挙戦での対立や分裂を癒やし、希望に満ちた未来へ共に歩もうと、国民に理念や理想を語るのが常だった。しかし、トランプ新大統領は、まさに選挙戦中の主張と同じ論理をくり返した。そこから読み取れるのは、<戦いは終わっていない。だから私は、敵に向かって挑み続ける>というメッセージだ。

     トランプ演説には、自由、民主主義、法の支配、人権、平等といった理念や普遍的価値観、合衆国建国の精神や歴史への言及はなく、独裁や抑圧への非難もなかった。

     オバマ前大統領の就任演説と比較すると、違いは一目瞭然だ。「米国の再生」と「新しい責任の時代」を訴えたオバマ前大統領の2009年の就任演説(2395語)は、建国の歴史を踏まえ、詩的表現や故事をちりばめて、緻密かつ格調高く構成されていた。トランプ氏は極めて対照的に、誰もがわかる平易な言葉を使い、あくまでストレートに自らの主張を訴え続けていく。

     それでは、カギとなるセンテンスを挙げてトランプ氏の大統領就任演説を分析してみよう。

    【あわせて読みたい】
    「アメリカ・ファースト」を制御する
    「トランプ丸」の進路を変えるには?
    トランプ大統領vsイエレン議長…難しい間合い
    “キャラクター抜き”で占うトランプ氏の経済政策

    2017年01月24日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP