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    国際

    『米中もし戦わば』…トランプ政権のアジア観を探る

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     米国のトランプ政権の外交には不明な点が多い。特にアジア外交については、中国への厳しい姿勢や同盟国に対する米軍駐留コストの負担増要求などは伝えられているが、いずれも断片的で、アジアの安全保障でどのような全体像を描きたいのかが見えてこない。そんな中、注目を集める本がある。国家通商会議(NTC)の委員長に就任したピーター・ナバロ氏の『米中もし戦わば』である。この本を手がかりに、住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんが、トランプ政権のアジア外交を占う。

    実績のあるアジア専門家不在

    • トランプ米大統領(ロイター)
      トランプ米大統領(ロイター)

     新政権のアジア外交を一層不透明にさせているのは政権人事である。現時点において、学問分野あるいは実務面で実績のある専門家は主要ポストに起用されていない。

     たとえば、ホワイトハウスでアジア外交を仕切る国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長に就任したマシュー・ポッティンジャー氏は、米紙記者として中国で取材活動を経験した後、海兵隊に入隊するという異色の経歴の持ち主だ。海兵隊では沖縄勤務も経験したが、アジア全体に対する理解や外交政策の立案能力などは未知数である。

     トランプ政権にアジアの専門家が見当たらないのにはわけがある。大統領選期間中、多数の共和党の外交・安全保障専門家が「トランプ氏の政策は支持できず、大統領選でも投票しない」という公開書簡を発表した。

     トランプ氏不支持を宣言した専門家の中には、リチャード・アーミテージ氏(元国務副長官)、マイケル・グリーン氏(元NSCアジア上級部長)、パトリック・クローニン氏(新アメリカ安全保障センター上級顧問)といった知日派、アジア専門家が含まれている。

     しかもトランプ大統領は、就任演説で米国の政治はワシントンにいる少数のエリートに支配されてきたと強調したことからもわかるように、政治の世界で主流とみなされていた人々を敵視している。そうした見方は、ワシントンの専門家集団であるシンクタンク出身で、これまで政権の要職に就いてきた人々にも及ぶ。実際、トランプ大統領の側近からは、シンクタンクは堕落したワシントン・カルチャーの一部であるとの発言も聞かれる。

     以上にかんがみれば、過去の政権で実績を積んだ人たちがトランプ政権に加わる可能性は極めて低いだろう。

     共和党系の著名なアジア専門家であるランドル・シュライバー氏(元国務省東アジア・太平洋担当次官補代理)、ビクター・チャ氏(元NSC日本・朝鮮部長)が政権に加わるという説もあるが、いずれもまだうわさの域は出ていない。

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    2017年01月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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