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    国際

    フェイクニュース汚染、欧州の危機感

    在英ジャーナリスト 小林恭子
     発足から1か月半がたった米トランプ政権。その周辺では、事実に基づかない「フェイク(偽)ニュース」が今も飛び交っている。人目を引く情報は、たとえ真偽がはっきりしていなくても、ソーシャルメディアを通じて急速に拡散していく。問題はフェイクニュースが世論や選挙結果に影響する可能性があることだ。これに危機感を強めているのが欧州諸国。今年はオランダで総選挙、フランスで大統領選、ドイツで連邦議会選挙が予定されており、いろいろな国が対策に乗り出した。フェイクニュースがはびこる現状とその対策を在英ジャーナリストの小林恭子さんがリポートする。

    暴徒が警察を襲撃、教会に放火?

     「衝撃:1000人にも上る暴徒が警察を攻撃、大みそかの日にドイツ最古の教会に放火」……今年1月3日、米右派系サイト「ブライトバート・ニュース」がこのような見出しの記事を掲載した。

     「男たちはイスラム教徒の祈りの言葉『アラーは偉大なり』を叫び、警察官に向かって花火を発射、歴史的に由緒ある教会に放火した」。現場には国際テロ組織アル・カーイダの旗があり、「イスラム国(IS)の協力者」やシリアの反体制武装集団「自由シリア軍」が集まっていた……。

     記事からは暴徒が大挙して街を襲撃する危険な情景が思い浮かぶが、実はこれはフェイクニュース。いくつかの個別の事象を一つにまとめただけの記事で、実際には、教会はドイツ最古ではなかったし、花火は行われたものの、教会を囲む建設用の足場を覆うネットに火が付いただけで、とても「放火」と呼べるものではなかった。現場を警備していた地元の警官らは、後になって「例年より静かだった」と報告したほどだった。

     「外国人」「移民」「男性」「イスラム教徒」という、耳目を集めそうなキーワードをちりばめた記事を掲載したブライトバート・ニュースは、トランプ米大統領を礼賛するウェブサイトだ。米大統領選では右派の支持者獲得に成功したが、米有力紙ニューヨーク・タイムズは「女性嫌悪主義」「外国人嫌悪」「人種差別主義のサイト」と評している。

     同サイトは昨年秋、フランス語版、ドイツ語版を作るという計画を発表した。米国での成功を欧州でも再現しようと狙っているようだ。

    難民の負のイメージ拡散を警戒

    • ベルリンのクリスマス市でトラックが突入し、12人が死亡した現場で、犠牲者を追悼する人たち(2016年12月撮影)
      ベルリンのクリスマス市でトラックが突入し、12人が死亡した現場で、犠牲者を追悼する人たち(2016年12月撮影)

     近年、中東やアフリカなどから、欧州に大量の難民が押し寄せたが、受け入れに積極的だったメルケル独首相にとって、難民・移民に否定的な感情を抱かせるような報道はマイナスに働く。

     2015年の1年間だけで、ドイツには約100万人の難民・移民が流入したという。ドイツ国内では受け入れの是非を巡る論争が発生し、メルケル首相の支持率は下落。昨年12月には、難民申請中だったチュニジア出身の男性がトラックでクリスマス(いち)に突っ込むというテロを起こし、12人が死亡した。こうした中、反移民を掲げる政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を広げている。

     9月の連邦議会(下院)選挙に4期目の首相を目指して出馬するメルケル氏にとって、反難民・移民感情を刺激するフェイクニュースは、黙って見過ごすわけにはいかない存在だ。

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    2017年03月09日 16時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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