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    スポーツ

    「五輪そっちのけ」の韓国で笑顔…IOC会長の胸中

    読売新聞編集委員・結城和香子
     来年2月の 平昌 ( ピョンチャン ) 五輪開幕まで1年を切った。その開催国、韓国が揺れているのは、ご存じの通りだ。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が定例の会議に出席するために現地入りしたのは、 朴槿恵 ( パククネ ) 前大統領の罷免が決まった3月10日の直後のこと。バッハ会長は14日にはソウルで 黄教安 ( ファンギョアン ) 大統領代行などと会い、五輪支援の言質を取り付けた。そして、こう言った。「平昌五輪は意義のある時期に開かれる。なぜならそれは、韓国の人々が再び一つになれる機会だからだ」。IOC会長が描くバラ色のビジョンは、果たして実現するのだろうか。

    ピンチはチャンス…バッハ流の考え方

    • 平昌五輪の選手村予定地を視察するIOCのバッハ会長(手すりに身を乗り出している男性)。左端は李煕範・大会組織委会長(2017年3月15日、結城和香子撮影)
      平昌五輪の選手村予定地を視察するIOCのバッハ会長(手すりに身を乗り出している男性)。左端は李煕範・大会組織委会長(2017年3月15日、結城和香子撮影)

     IOCの会長とは、五輪の防衛のために、あちこちで火消しに追われる稼業でもある。

     しかし、バッハ会長の動き方は少し違う。火消しを防戦とだけ捉えるのではなく、時にはかなり無理なレトリックまで駆使して、ピンチをチャンスに変えようと腐心する傾向がある。攻撃は最大の防御、というわけだ。

     IOCの立場から、平昌五輪を取り巻く現況を見てみよう。

     韓国史上初の現役大統領罷免という政治的激震は、来年2月9日の平昌五輪開幕まで、あと11か月余りの時に起きた。政治論議で、まっぷたつに割れる韓国世論。五輪どころではないメディア報道。国外を見れば、北朝鮮との緊張関係や、こじれ始めた中韓関係が影を落とす。ただでさえ、五輪準備の詰めの段階では、輸送や宿泊などの解決すべき課題が山積し、高騰する建設コスト等に厳しい目が向けられる。通常だったら、これはもう頭を抱える事態だ。

     ところがバッハ会長は、動じない。

     ソウルで政府や与野党の高官に会い、大学では名誉博士号の授与を受けた。平昌に乗り込むと、冬季競技の選手たちを伴い、選手村の建設現場を視察した。選手と談笑をしてみせた後、同行を許した一部報道陣に向き合った。

     「ソウルで多くの政治家と会った。今後、政治で何が起ころうとも、5月の大統領選の結果がどうなろうとも、五輪への超党派の揺るがぬ支持を約束してくれた。それは、平昌五輪が韓国の人々を再び一つにする、またとない機会を提供するからだ」

     韓国の政治状況は、むしろ平昌五輪の意義を高めるというレトリックだ。余裕を装うその笑顔は、記者団からのどんな質問にも不変だった。

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    2017年03月31日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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