文字サイズ
    国際

    米シリア攻撃、前政権との違い強調…北朝鮮にも“警告”か

    村田晃嗣 同志社大学法学部教授
     アメリカがミサイルによるシリア攻撃に踏み切った。米中首脳会談のさなかというタイミングでの実力行使は国際的にどのような意味合いを持つのか。米国政治に詳しい識者に聞いた。

    • 米軍艦船から発射されたトマホーク(米国防総省提供)
      米軍艦船から発射されたトマホーク(米国防総省提供)

     トランプ大統領がミサイルによる対シリア攻撃を行った。シリア問題はオバマ前大統領が外交的に失敗した典型的なケースで、「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と言いながら、何もできなかった。

     米フロリダで米中首脳会談が始まり、北朝鮮問題が議題になる中で、中東におけるシリアと、アジアにおける北朝鮮はオバマ外交がもっともうまくいかなかった例だ。いまその二つの事案がちょうど表に出てきている。オバマ前大統領との違いをことさら強調するということは、トランプ大統領も意識していると思う。

     米国の内政的にも目玉だった医療保険制度「オバマケア」の見直しについて、米議会共和党の支持もとりつけられずに失敗しているので、トランプ政権の行政手腕についての不信感がますます確信的に強まっている。そうした時にトランプ大統領がシリア攻撃を対外的に強いリーダーシップを示す機会だと考えたとしても、不思議ではないと思う。

     シリアで強気に出るということは、中国の習近平国家主席との会談でも、「北朝鮮についてもアメリカはやる気があるのだ」という、ある種のブラフに使えると考えているかもしれない。

     しかし、結局、ミサイル攻撃だけでシリアの事態そのものを改善させることはできない。短期的にはリーダーシップを示し、ある程度の落としどころでロシアと妥協するとか、あるいは他の問題で中国にやる気を示すといった副次的効果は示せるものの、シリア問題そのものに対する根本的解決にはつながらないだろう。その意味ではオバマの陥っていた落とし穴から抜けきれないということになる。

    • 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=ロイター
      北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=ロイター

     北朝鮮については、「アメリカは北朝鮮についても攻撃をためらわない」という方向で同国が理解することを米国が意図しているのは間違いないだろう。

     ただ、シリアの置かれた状況と北朝鮮の状況とは異なる。シリアと違って北朝鮮は内戦状態に陥っていないし、北朝鮮は韓国や日本と隣接し、軍事行動をとった時の反発はシリアの比ではない。シリアを攻撃できたから北朝鮮に対して簡単にできるというものではない。

     しかし、トランプ政権は「一歩を踏み出す」意思があることを示す一つの材料にはなるだろう。これはトランプ大統領が前政権との違いを示す意思表示でもある。(談)

    プロフィル
    村田 晃嗣(むらた・こうじ)
     1964年、神戸市生まれ。95年、神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。米国留学を経て、96年、読売論壇新人賞・優秀賞受賞。2005年より同志社大教授。13年から16年まで同大学長を務める。近著に「レーガン」(中公新書)など。
    2017年04月07日 14時19分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP