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    国際

    シリア内戦、もう一つの危機

    ユニセフ・アジア親善大使 アグネス・チャン
     シリア内戦が6年を超え、子供たちの将来が危機にさらされている。衛生環境や栄養状態の急速な悪化で、シリア国内で支援を必要とする子供は約580万人。シリア国外に逃れた子供約230万人と合わせて800万人以上が、十分な教育をはじめとする社会的なサービスを受けられないでいる。このままでは将来、シリアが国家を再建する時に「失われた世代」になってしまう。ユニセフ・アジア親善大使で、今月、シリア周辺のヨルダン、レバノン、トルコの3か国を訪問したアグネス・チャン氏が、子供たちの危機を食い止めるための支援の最前線を語ってくれた。

    登録された難民、されていない難民

    • ヨルダンで最大規模のザータリキャンプを訪れたアグネス・チャン氏。キャンプにはシリア難民約8万人が住む(c)日本ユニセフ協会/2017/S.Taura
      ヨルダンで最大規模のザータリキャンプを訪れたアグネス・チャン氏。キャンプにはシリア難民約8万人が住む(c)日本ユニセフ協会/2017/S.Taura

     シリア内戦について、最初はよくわかりませんでしたが、イスラム過激派組織「イスラム国」の問題が大きくなった時、自分で調べてみました。イスラム国の支配地域に住んでいる子供たちのことが心配になり、2年前にシリア行きを計画したのですが、入れる状況ではありませんでした。

     その時はあきらめたのですが、今回、シリアには入れなくても、シリア難民を支援している近隣の国に行けば子供たちに会えるだろうと思って、4月2日に日本を出発し、ヨルダン、レバノン、トルコを訪問して、13日に戻ってきました。

     シリア難民は、ヨルダンに130万人います。これは政府の推計です。しかし、登録されているシリア難民は65万人。そのギャップの理由は、登録されていない難民がいるからなのです。登録されている難民は、政府や国連機関の援助が受けられます。登録されていない難民でも、ユニセフやユニセフが支援している民間活動団体の援助は受けられるのですが、政府のサービスを受けるのは登録されている難民が有利です。

     ヨルダンにいるシリア難民の18歳未満の子供は33万人ぐらい(『世界子供白書2016』による)と言われています。ヨルダンで生まれた子もたくさんいます。ヨルダンの人口は760万人ぐらい(2015年)なので、130万人の難民はどのくらい大きな負担なのかがわかると思います。

    町の支援拠点、マカニセンター

     今回、難民に対するイメージが変わりました。私は今までいろいろな国に行きましたが、難民は難民キャンプにいます。ところが、シリアの周辺国ではキャンプで生活している難民はわずかで、残りは普通の町で生活しているのです。

     どうやって支援するのかと聞くと、現地政府や民間活動団体、ユニセフでスタッフをたくさん使って町の中に出て行くというのです。情報は口コミで集めるのですが、みんなは自分たちがかなり把握できているという自信を持っていました。次に援助を必要とする人たちが訪ねてくるセンターをたくさん作り、そこでサービスを受けられるようにするのです。

     そうした拠点のひとつに、マカニセンターというのがあります。マカニというのは現地の言葉で「私の場所」という意味です。難民はまず、自分はどういう人で家族は何人いるといったことを説明したうえで、様々なサービスを受けることができます。子供は学習や心理的なケアが受けられ、大人も様々な相談事を聞いてもらえます。すごく重要な支援の拠点ですね。

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    2017年04月20日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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