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    国際

    政権1年、スー・チー氏が背負う重荷と希望

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     軍事政権が長く続いたミャンマーで、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の政権が発足してから1年余りが過ぎた。事実上の最高指導者スー・チー氏の人気は依然衰えていないが、少数民族の問題は解決の糸口をつかめず、政府の実務能力には課題を抱えたままだ。スー・チー氏個人の力に頼る新生ミャンマーの国づくりは早くも正念場にさしかかった。日本ともなじみの深いミャンマーの未来を住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに展望してもらった。

    活発な日本企業進出が続くフロンティア

    • ティラワ工業団地で今年2月に始まった拡張工事の起工式(写真提供:住友商事グローバルリサーチ)
      ティラワ工業団地で今年2月に始まった拡張工事の起工式(写真提供:住友商事グローバルリサーチ)

     2011年の民政移管と外資開放路線への移行以来、ミャンマーは、アジア最後の「フロンティア」とも呼ばれ、多くの外国企業を()きつけてきた。15年度の外国からの投資は12年度と比較して7倍近くに増加。16年の時点で日本から300を超える企業が進出している。

     日本企業の多くは、インフラや法制度の未整備といった課題に直面しながらも、その高い将来性を評価している。ミャンマーの強みは、5300万人の人口を擁する国内市場がほぼ未開のまま残っていること、ASEANとインドという二つの巨大市場の中間という地理的優位性、豊富な天然資源に加え、安い人件費、勤勉な国民性などが挙げられる。

     日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、日本から進出した企業の約8割が事業を拡大する方針だという。日本の官民が連携して開発したティラワ工業団地では安定した事業環境が実現し、今年2月には拡張工事が始まった。

    具体策に欠ける経済ビジョン

    • ティラワ工業団地のゲート(写真提供:住友商事グローバルリサーチ)
      ティラワ工業団地のゲート(写真提供:住友商事グローバルリサーチ)

     国民が新政権に求めているのは経済の発展である。ミャンマーの経済成長率は、前政権の開放政策によって、12年以降、7%超の水準を維持してきた。4月に発表されたアジア開発銀行の見通しによれば、ミャンマーの17年と18年の経済成長率はそれぞれ7.7%、8.0%とASEAN10か国では最高となっている。

     新政権のこれまでの最大の成果は、米国の制裁解除だ。スー・チー氏は昨年9月、米国を訪問し、当時のオバマ大統領と会談した。これを受けて米国は昨年10月、経済制裁を全面解除した。ミャンマーにおけるビジネスの自由度は大きく向上した。

     昨年10月、外資規制の緩和につながる新投資法も制定され、今年4月から施行されている。会社法の改正法案も年内には承認される見込みである。これにより外資の投資環境は改善する見通しである。

     しかし、それ以外に特筆すべき成果が上がっているとは言い難い。経済政策のビジョンは発表されたが、具体的な内容は明らかになっておらず、引き続き課題となっている。また、前政権で認可されていたプロジェクトが見直しになるといった混乱も生じている。

     経済政策が期待されるほど進展しない背景には、政権を支える閣僚や官僚の実務能力に課題がある点が大きい。NLDには統治経験のある人材がほとんどおらず、スー・チー氏も例外ではない。

     現在、日本企業が一番気にしているのは、政治の不確実性である。「新政権の下でミャンマーは安定するのか」「前政権が推進してきた経済開放路線はどうなるのか」といった不安の声が多くの日本企業から出ている。

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    2017年04月25日 15時17分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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