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    国際

    南スーダンの深刻な国内対立…自衛隊撤収後にできること

    上智大学グローバル教育センター准教授 東大作
     5月末をめどに、アフリカ・南スーダンでPKO活動に従事していた自衛隊施設部隊が撤収作業を完了する。安倍首相は「治安悪化が理由ではない」と強調するが、同国内は武装勢力が乱立し、危機的状況を迎えつつあるという。日本史の戦乱の時代にも似た同国の混迷ぶりを、国連PKOや平和構築の研究を続ける上智大学グローバル教育センター(同大学国際関係研究所兼務)の東大作准教授が、現地報告を交えて解説する。

    「もうダメだ」見限られた元副大統領

     今年2月、私はケニアの首都ナイロビにあるホテルのレストランで、一人の長身の男性と向かいあっていた。戦争で負傷し、片足の機能を失った彼は、(つえ)を巧みに使いながら店に入り、席に着いた。

     彼の名は、ピーター・アドワック氏。昨年7月に南スーダンの首都ジュバで軍事衝突が勃発するまで、同国の高等教育担当大臣の要職にあった人物だ。国を二分する内戦の一方の雄、リエック・マシャール元副大統領の側近でもあった同氏の言葉は、私を驚かせた。「マシャールはもうダメだ。彼では、もう反政府勢力をまとめることができない」。

     わずか半年前の昨年8月、同じホテルで会った際、アドワック氏はマシャール元副大統領を強く支持していた。同氏を中心に、サルバ・キール・マヤルディ大統領に反対する勢力を糾合し、政権転覆を目指すと意気込んでいたのだ。実際、私をナイロビ郊外で開かれた反政府勢力の会合に招待し、その勢いと決意を示した。そのアドワック氏が、長年の盟友であるマシャール氏をすでに見限っていることを打ち明けたのだ。

    アフリカの「応仁の乱」

    • ペットボトルなどで水を運ぶジュバの子どもたち(2012年2月撮影)
      ペットボトルなどで水を運ぶジュバの子どもたち(2012年2月撮影)

     「ならば、反政府勢力の勢いは弱まるのか?」。私がたずねると、彼は答えた。「いや、マシャール氏の求心力は弱まったが、キール政権に反発する人々が各地で蜂起している。ジュバから離れた国の北部や南部ではいろいろな部族や政治勢力が、自分たちの安全を守ろうと立ち上がり、武装闘争を始めている。それは必ずしも悪いことではなく、『自分たちの命や生活は自分たちで守らないと』という自覚を生んでいるのだ」

     「悪いことではない」というが、要は武器を手にした小規模勢力が乱立しつつあるということでもある。より収拾が難しくなるのではないか。話を聞きながら、私は母国・日本の歴史上のある事件を思い浮かべた。室町時代後期、政権内部の有力者間の対立に端を発し、やがて各地を戦乱へと巻き込んでいったあの事件――「応仁の乱」だ。

     足利幕府の内部対立から、東軍・西軍の二大勢力の衝突へと発展した争乱である。争いは11年間も続いた。両軍を率いていた有力者たちは疲弊して力を失い、各地で新興勢力が台頭。群雄割拠・下克上の戦国時代へと突入するきっかけとなった。それと同じようなことが、21世紀のアフリカ東部の地で起こりつつあるのだ。

    2017年05月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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